第29話 卒業試験(6)


 僕達がパープルレモンに行くと士官学校同期卒業生のほとんどが集まっていた。

 ドアを開けるとみんなの目が一斉に二人に注いだ。いつものことだと思っていると


「カレン、綺麗」

 淡いピンクのワンピースを着ているサキが、二人に寄って来た。普段、いくら顔が可愛いとはいえ、士官の服装をしている。

 さすがに私服を見たことはあまりないサキは、カレンの洋服を見て驚いていた。


 ミコトは、ジーンズに軽くシャツを着ているだけだ。サキは、ミコトを見るとふーんという顔で流した。


「でもミコトもかっこいい。似合っているよ」

レイの言葉に少し照れた顔をすると、


「うーん、やっぱりミコト、カレンと同じ洋服着たら」

サキの言葉にレイとミコトが一瞬滑りそうになると


「さすがにそれはないだろう」

と言って、レイがサキの顔を見て言いすぎだという表情をした。四人のところにレイナとタクヤがやって来てにぎやかに話し始めるとパーティの幹事が、


「レディースアンドジェントルマン。フレイシア航宙軍第一二七期士官学校卒業生諸君。

 今日は、我々の二年間の努力が報われ晴れて士官学校を卒業し、航宙軍航宙機戦闘部隊に配属になる前の自由なスリットタイムだ。

 大いに飲んで今までの努力をお互いに賞賛し、今後の期待に繋ごうではないか」


 二人は、一般士官候補生と全く別の扱いを受けて来ていた為、レイやサキからどんな教練を積んでいるか、周りの仲間の状況はどうかなどの情報は貰っていたが、人間関係は全く想像の外だった。


 それだけにもう記憶にない元士官候補生の一人が司会の言葉を言い始めてもピンと来なかった。

 不思議そうな顔をする二人に


「あいつは、候補生の時からお祭りの仕切りが好きな奴さ。気はとてもいい奴だ。後で紹介するよ」

レイはそう言って二人に微笑んだ。


 その夜、パープルレモンでは、閉店を過ぎても帰らず、遅くまでにぎやかだったのは、想像に難くない。


 二人とも少しだけ羽目を外したが、二人を見つめる久山の目は、完全に仕事の目をしていた。


  翌日、翌々日とカレンとミコトは、両親と軍事衛星アルテミスの内部と言っても、特殊軽合金クリスタルパネルで覆われた田園地帯の散策と食事、そして商用区でアルテミスお土産グッズなどを買ってあげると両親はその翌日に首都星ランクルトに降りた。


 僕達は、フレイシア航宙軍士官学校を卒業すると、レイやサキともに、アッテンボロー大佐率いるフレイシア航宙軍第二艦隊所属航宙戦闘機部隊に配属された。レイナとタクヤは、別の部隊となった。


 レイとサキは、小隊の新人として組み込まれるが、カレンとミコトは、正式に河井大尉が管轄するフレイシア航宙軍初めての無人機四機を含むアトラスⅣ型六機の特別独立編成部隊アテナを構成することになった。


 名前については異論もあったが、二人の容姿とその力量からウッドランド大将までが

「いいじゃないか。ぴったりだ」と言う事で決まった。


 これによりカレンはアテナⅠ(ワン)、ミコトは、アテナⅡ(ツー)のタックネームを貰うことになった。

 ジュンとサリーは既に二人の脳波認証で無人機の人工知能に組み込まれてしまった為、それぞれカレンとミコトが使用する事になっている。


 通常、伝達が言葉ならば混乱をきたすが、無人機に対しては、脳波しか反応しない為、問題ないということで採用された。


「カレン少尉、フレイシア航宙軍からの通達だ。カレン少尉を本日付で中尉へ昇進する」

「ミコト少尉、以下同文だ。おめでとう二人とも」


緊張した面持ちでアッテンボロー大佐の言葉を聞いた二人は、目を輝かした。


「カレン中尉、ミコト中尉、本日付でフレイシア航宙軍第二艦隊航宙戦闘機部隊所属とする」


そして言葉を切った後、微笑んで

「ようこそ我隊へ」

そう言って二人に握手をした。


 後ろに座っている第二艦隊のパイロットのうち、アッテンボロー大佐が統括する七五〇名が大拍手をするとカレンとミコトは、恥ずかしそうな顔をして隊員に向って頭を下げた。

「続いてレイ太田准尉」


「青山ツインズ任官おめでとう」

任官式が終わったカレンとミコトは、二人の後ろから声を掛けられ、振向くと


「久山さん」

士官候補生のまま航宙軍に配属され、基地内の出入りが自由となって以来、三ヶ月間の間、二人の前から消えていた久山衛生担当官が声を掛けた。


嬉しそうな顔をして二人に近づく久山は、

「これからは、航宙軍第二艦隊の航宙母艦ラインの衛生担当官として二人に接することになります。

 身分は中尉。二人と同じよ。でも直ぐに私が敬礼する日が来るわね」

そう言って敬礼するとカレンとミコトも微笑みながら


「「こちらも宜しくお願いします」」

いつものようにハーモニーしながら二人は敬礼をした。


 カレンとミコトは期待に胸を膨らませ、これから始まるであろう、広域航路探査や宙賊対策の為の輸送艦護衛の航宙に夢を馳せたが、現実には、二人が想像もつかないミッションはもう直ぐそこに迫っていた。



―――――


いよいよ次回からカレンとミコトのミッションが始まります。


次回をお楽しみに。


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