第18話 遠征訓練(2)


航宙母艦アルテミスの係留場所に来ると僕達は後ろからじろじろ見たが、なにも変わっていない。


「カレン、久山さんが改造されたといって言っていたけど、なにも変わっていないよね」

「うーん、私もそう見える」


どう見ても変わっていない艦の形状にそのまま中に入ってパイロットウエイティングルームに行くと河井大尉が待っていた。二人の顔を見ると


「カレン准尉、ミコト准尉、フレイシア航宙軍からの通達がある。これから私と一緒に司令官公室に来てくれ」


河井の言葉に二人は目を丸くして

「「司令官公室」」


いつものハーモニーに河井は苦笑しながら

「驚くことはない。私も一緒だ」

そう言うと行くぞと目配せした。




司令官公室の前で河井は自分のIDをドアの左側のパネルにかざすとドアが開いた。


「河井大尉入ります。カレン准尉とミコト准尉を連れて来ました」

航宙軍式敬礼をすると僕達もそれに習った。


目の前にいる三人の高官が答礼すると腕を降ろして


「カレン准尉、ミコト准尉。私はラウル・ハウゼー、このラインの艦長だ。

そしてこちらが、もう知っているだろう。ルイス・アッテンボロー大佐。航宙軍航宙戦闘機部隊の大佐。

そしてヘラルド・ウオッカー軍事衛星アルテミスの航宙軍士官学校の長官だ」


言葉を一度切るとヘラルド・ウオッカーの顔を見た。

ウオッカーが二人の前に来るとスクリーンパッドを目の前にして


「カレン准尉、ミコト准尉、フレイシア航宙軍司令ジェームズ・ウッドランド大将からの通達だ。

カレン准尉、航宙軍通達第二一条第四項に基づき航宙軍士官候補生の身分を解き、フレイシア航宙軍准尉として二人を航宙軍航宙戦闘機部隊ルイス・アッテンボロー大佐の部隊所属とする」

カレンに正式通達のパッドを渡すと


「ミコト准尉、以下同文」

そう言って笑顔を見せた。


「おめでとう、カレン准尉、ミコト准尉。これで正式に我々の仲間だ。よろしく頼む」

笑顔を見せるアッテンボロー大佐に、二人は緊張した面持ちでなにも言わずに敬礼をしていると


「そんなに固くなるな。これからは仲間だ」

河井大尉も笑顔を見せた。


河井を先頭に二人はパイロットウエイティングルームに戻ると河井の部下が並んで待っていた。そして二人が姿を見せると一斉に敬礼して


「カレン准尉、ミコト准尉。河井部隊にようこそ」


二人が拍手で迎えられると、河井が部下に笑顔を見せながら、

「二人は、特別独立編成部隊ツインズを構成する」


「特別独立編成部隊ツインズ」

なーにそれ?という顔をすると


「私が説明しよう」

パイロットウエイティングルームに小郡航宙軍開発センター長が入ってきた。




「二人ともついて来なさい」

小郡の後をついて行くと航宙戦闘機射出庫に連れて行かれた。中に入ると横八機、縦一二機の発着ポートの前二機その後続に二機ずつ見たことのない機体が並んでいた。


「カレン准尉、ミコト准尉。これがフレイシア航宙軍最新型航宙戦闘機アトラスⅣ型だ。この六機のうち、君たちが乗るは、前の二機だけだ。後ろの二機は君たちにシンクロして飛ぶ。

それぞれに名前を付けてくれ。君たちの言葉や思考しか聞かない。この六機が、特別独立編成部隊ツインズを構成する」


一度言葉を切ると


「君たちはお互いにシンクロをしていたが、それをそれぞれの二機に対して行ってくれ。

 君たちのデータは全てこの二機ずつに入っている。いつもと同じ感覚で飛んでくれ。早速だが、今日の航宙訓練で出てもらう。細かい事はまた、後で説明する」

そう言ってサングラスの下で微笑んだ。




「カレン准尉出ます」

「ミコト准尉出ます」


二人がハーモニーするように言うと発着艦管制センターから可愛い声の女性が


「カレン准尉、どうぞ」

「ミコト准尉、どうぞ」

とヘルメットの中に聞こえてきた。


 同時に六機のアトラスⅣ型が航宙母艦ラインの底部から射出されると僕達は強烈なダウンフォースを感じながらラインから飛び出した。


 カレンは、自分追随する二機に思考を送ると一瞬えっと思った。「ミコト」心の中でそう感じると二機に意識を写した。


 ミコトも同じだった。追随する二機の無人機にカレンの意思を感じる。いつもと同じように思考すると二機はピッタリとついてきた。


「カレン、ミコト、デルタスリー」

 河井の声が二人のヘルメットに入ってくると二人は、後続する無人戦闘機アトラスⅣ型を二列に並ばせてその上に自分の機を合わせた。


 二人は、二機を従えながら〇.一光速の速度で直進すると急激に上昇しV字形に分かれた。

 三機がそれぞれに背を三角合わせるようにすると両舷に装備されている荷電粒子砲が航宙戦闘機の底部に移動した。


「ミコト」

 その声に反応するようにV字で一度離れた僕達は、今度は近づきながら一編隊三機、一機二門、合計六門の荷電粒子砲が発射された。


 トルネードのように束になりながらダミー航宙重巡航艦の右側舷に、カレンは右舷前方からミコトは右舷後方から計一二門の荷電粒子の束が同じ場所に突き刺さると側面防御シールドが強烈な光を出し、荷電粒子の通過を阻止した。


「ミコト、連射」


 さらに三角形の二編隊からそれぞれ六本の荷電粒子が射出されると先ほどと同じ側面防御シールドにぶつかった。今度はシールドが少しの光の後、破れると、軽巡航艦の側面に当った。


 一瞬抵抗したが、やがて徐々に解けていくと途中で止まったが、瞬時に発射された二射目が同じ側面に当ると今度は一挙に艦の中まで行き反対側の舷側に内側からぶち当たり半分以上を解かした。


「ミコト止め」

 赤い大きな光点から黄色い光点に変わったのを見て取るとカレンは、ミコトに脳波で呼びかけた。別に声を出しているわけではない。


 三機一編隊の二編隊が悶え動く重巡航艦に荷電粒子砲を射出すると一挙に右舷上方二次方向に上昇した。やがて黄色い光点が消滅すると


「カレン、左舷後方、エネルギー波」


 一瞬で六機が一糸乱れぬ編隊で三機ずつ両方に分かれると、今まで六機が居た場所に六機まとめた大きさより巨大な閃光が走り去った。


「カレン左舷上方背面展開後、後方の戦艦を撃つ」


 六機が一糸乱れぬ形で大きく背面展開すると六機の底部にある荷電粒子砲から眩いほどの光が射出された。


―――――


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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