笑顔がトレードマークなので
ゆりえる
第1話 天使のようなママとは......
事の発端は、娘の天根ニヤの幼稚園のお友達の言葉。
「ニヤちゃんのママって、優しくて天使みたい!」
それを各々の家で連発するものだから、幼稚園児の母親達は、子供達が褒めまくる『ニヤちゃんのママ』に興味津々。
気付くと、お迎え時には、私の周りには、常に自称ママ友達が群がるようになった。
中には、全く違うお迎え時間帯だったのに、わざわざ狙って、私の現れる時間帯に切り替えた母親も多くなり、今まではスムーズにニヤをお迎え出来たが、順番待ち列が生じる事になった。
幼稚園の先生達も、その時間に集中するお迎えにてんやわんや。
過密などという状態になり、お迎え時間帯を振り分けようと試みるも、母親にとって不都合と却下され、気の毒だった。
自称ママ友達が、私に近付くのは、自分達を優位に立たせる為のアラ探し目的という事が、日を追う毎に明白になって来た。
「ねぇねぇ、ニヤちゃんママ、習い事ってさせている?」
ニヤとわりと仲良しの
「いえ、まだ幼稚園児だし、ニヤ自身が興味を持った時でいいかなと思って」
「幼稚園児ったって、もう年長よ!そんな事言っていたら、いつまで経っても習い事1つも出来ないわよ。ここは、しっかりと親が導くべき!」
ニヤとはそこまで仲良くない
「そうそう、ニヤちゃんママは、優し過ぎるから、何でもニヤちゃん主体よね。でもね、子供に振り回されるより、子供はまだ何も分かって無いから、親がちゃんと教えて興味持たせてあげないと!」
ニヤから聞いた話では意地悪の一点張りの
「えっ、なになに?ニヤちゃんママどうしたの?」
そばにいたママさん達もお迎えそっちのけで興味津々で近付いて来た。
「習い事だけど、皆は何を習わせているの?」
それなら、周りは何を習わせているのか、この機会に聞いておこう。
「うちは、ピアノとスイミング」
「英語とバイオリン」
「公文と習字」
「体操教室とピアノ」
「絵画とスイミング」
なるほど、確かに我が家以外は、もう習い事始めているわけね。
「他のは、いつ始めても良いと思うけど、英語を聞き取る聴力は早くに始めた方が断然有利なの!今は、小学校から学校で英語の教科が有るから、やっぱり英語教室がお勧めよ!是非、これ読んでみてちょうだい!」
お友達を誘うキャンペーンのパンフレットまで持参して来て、推しが強過ぎる珠美ちゃんママ。
ニヤが珠美ちゃんが意地悪って言っているのも、このママを見ていると分かる気がする。
「あらっ、音感だって、早目の方が大事よ!千夏は、2歳の時からピアノを習い始めたのよ!あっ、モチロン、安い電子ピアノじゃなくて、本物のピアノじゃないとダメよ!ホントに全然音が違うから!」
同じく、ニヤがあまり仲良く出来ない千夏ちゃんも、このママの口調から気持ちが伝わって来る。
こんな小さいうちから、習い事をするのは良しとしても、親の気質まで受け継いでしまって、何とも不憫に感じられるわ。
「アドバイスは有り難いけど、習い事させるような余裕が無いかも」
ボソッと言うと、それを聞き逃さないママ友達。
「えっ、そんなギリギリの生活しているの、ニヤちゃん家って?」
「子供達が、ニヤちゃんやニヤちゃんママの事を天使のようだって褒めるから、さぞかし優雅な生活をしているのかと思っていたわ!」
ギリギリの生活......って。
そこまで切り詰めている生活しているわけでもないけど、習い事からの天使話から抜け出せるような言い逃れ方って、どんなのだろう。
「そんな褒めて頂けて嬉しいけど、それは買い被りかなって」
適当に笑って誤魔化して見た。
「ううん、私達から見ても、ニヤちゃんママは天使だよね~?」
他のママ友達に同意を求める千夏ちゃんママ。
「うん、天使じゃなかったら、聖母マリア様」
そこまで子供達がヨイショしてくれるのは有り難いけど、その反動で、この窮屈なママ友さん達の注目ぶり。
私は、別に注目を浴びたいとか目立ちたいとかって願望なんて、これっぼっちも無いの。
ただ、ニヤが卒園まで、この幼稚園で楽しく過ごしてくれたらいいなと願っているくらい。
あとは、ママ友さん達とは特に当たり障り無い状態でいられたらと.....
でも、今のままだと、何かと羨望というより嫉妬に近いような視線と言動を浴びせて来ているのがひしひしと伝わってくるから、この幼稚園の送迎の時間が結構悩ましい。
何とか、ママ友さん達の注目から脱却出来る術は無いものかな?
誰か、新しいターゲットになりそうなママさんが現れてくれると有難いのだけど、この幼稚園って、途中から転入してくる園児があまりいないから、期待薄そう。
卒園まで、こんな調子で、ニヤも私も、事あるごとに注目集める生活が続くのかな?
......憂うつ。
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