中国語を学ぶ過程
もや
第1話 そんな顔をされるとは思わなかった。
勤め先には中国からの技能実習生が数人いる。
休憩時間は同じ場所で過ごすが、他の日本人従業員と会話をするところは見たことがない。
無口な人なのかと思いきや、中国人同士が集まると会話が白熱する。そしてとても楽しそうだ。
私もその会話の中に入りたいと思った。
私が中国語の勉強を始めたきっかけだ。
ある春の日の休憩時間、どきどきしながら私は一人の技能実習生に突撃する。
私:「にーはお。えーっと。にーじゃおしぇんまみんずー!?」
王さん(仮名):「你好。我叫王静。」
(は!?何???こいつなんで中国語っぽいものを話しているのだ。こわっ!)←私から見た、王さんの表情。
中国語が通じたことはうれしかったのだが、この王さんの表情が気になった。他の技能実習生も最初同じような表情をしていた。「とまどい」の顔。
英語やほかの言語でその国の人に話しかけたときに、こんな顔をされたことはなかったはずだ。
お多福のような顔の私がアメリカで英語を話すのは、当たり前のこととしてとらえられた。
フランスでフランス語を話せば、「あらフランス語できるのね。英語で話されても困るわ。」と歓迎された。
「日本の会社で中国語を話そうとする」だけでなく、「日本人が中国語で話す」ということが彼らにとって異様なことだったのかなぁ。
そんなことを考えながらも、新しく覚えたフレーズを時々彼らにぶつけている。
私の発音がイマイチなのでたいてい通じないのだが。
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