第13話 決着2
「いじめを受けててずっと考えてた。あんたの中にあるもやもやした何かを。まあ、別にいいんだけどさ。」
室は驚いていた。
「うそ・・・・じゃあ、今までのわざと・・・!?」
「あんたね、あたしがそうやすやすとされるがままになると思ったわけ?
他の子らがあんたのターゲットにならないように私に仕向けてたに決まってるでしょ。
大体ね、傍からみたらあんた相当ないじめの主犯格よ。本当なら警察呼ぶところなんだから。」
森村はため息を吐いた。
怒りは湧いているようだったが、冷静なようにも見える。
それもそうだ。本当ならこれだけのことをされて怒鳴り散らしてもいい所を大きな声も出さずに淡々と話している。
室は静かに涙を流していた。
それが次第にしゃくり始めた。
森村は黙ってハンカチを出して涙をふいてあげた。
その行動に、月哉も三枝もびっくりしていた。
普通、いじめられていた人物の涙など拭けるだろうか。
「私が悪いのになんであなたが私の涙をふくの?私が優を取ったのに!私がみんなに森村さんを嫌うように仕向けたのに!」
森村は涙を拭きながら言う。
「優のことはもう終わったことだし、あたし今好きな人もいるから別にもういいのに。
あたしはね、あんたが美人だし可愛いから仕方が無いと思った。優のことで恨んだりしてあんたを攻撃したりは絶対にしない。」
森村は静かに語りかけた。
「こうでもしないと、優をあたしだけじゃなくて誰かにとられるって思うものね。優は人気者だもの。
他の人はあたしが虐められるの見れば、誰も優に手を出さない。それにみんなあんたの味方するもんね。あんたを同情して優しくなる。みんなも虐められたくないって思ってるし、あんたと同じようにあたしをいじめないとみんなあんたに虐められるって思う。だからクラスの子みんな、うわべだけの仲良しなんだものね。」
月哉はその姿をみて、森村の優しさを噛み締めた。
「私・・・・」
室が呟きだす。
「私、優を取られたくなかった。私が悪いのはわかってた。でも、私は悪者になりたくなかった。私のまわりはみんな優しくなくちゃ嫌なんだもん。ほんとのこと話したら私が絶対まわりにハブられる。そんなの絶対無理よ。私には耐えられない。」
馬鹿じゃないの、と森村は言って再びため息を吐いた。
「あんたね、それは自己中すぎ。
それはね、あたしも巻き込まれて最悪だし、優も巻き込まれて最悪。
あんたの取り巻きたちが本当のことを知ったら、一番傷つくのはあんたになるよ。
あんたを責めようとは思ってないからあたしのことはもうほっといてほしい。」
森村は言った。
たまってたものが吐き出されたのだろうか。
室はずっと泣いていた。
月哉と三枝は見守っていた。
森村は室が泣き止むまでそばにいた。
そして、ハンカチとティッシュを持たせていた。
室が泣き止むと、三枝が連れ立って帰った。
月哉と森村はその場に残った。
月哉は真っ先に聞いた。
「てか、お前その怪我なに?」
「人災だけど?」
さらりと答えたが、恐らく室の取り巻きにやられたのだろう。
月哉は森村をぎゅっと抱き締めた。
「先輩?」
「馬鹿野郎・・・・お前・・・」
森村に会えたことが嬉しくて。
久しぶりに会えた喜びを噛み締めた。
「あの・・・あたし勘違いしちゃうからそうゆうのやめてよ」
「え?」
「先輩が好きなのはイノリでしょ?あたし、キサトなんだけど」
「知ってるけど?」
「じゃあ、なんで・・・」
「三枝なんか忘れてしまえ。俺が目一杯甘やかしてやるから。」
月哉のその言葉に、森村はぎゅっと抱き締め返して応えた。
それから笑いあった。
「あたし、ビッチらしいんだけど。」
「いい子ぶられるよりマシ。」
「なにその言い方!最低!」
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