第19話 東の塔に着く
「はぁ……やっと着いた」
俺達は長い時間と労力をかけて、やっとの事で東の塔までたどり着くのであった。
「はぁ……はぁ……はぁ……。やっと着きましたね」
「あれが東の塔です……」
リディアが指を指した先には、山のように高い塔があった。
「早速、中に入るか」
「ええ……」
「入りましょうか」
こうして俺達は東の塔の中に入っていくのである。
◇
俺達は塔を登っていった。特に何も起こらなかった。塔の中身は螺旋階段になっていた。
……おかしかった。やはりおかしい。ただこのまま、何事もなくクリスタルが手に入るとは到底思えなかったのである。
それなりに貴重なクリスタルが何の障害もなく、手に入る事は考え辛かった。
俺達はぐるぐると回る螺旋階段を頂上まで回る。
「着きましたね……ここが頂上のようです」
リディアはそう語る。頂上にあったのは輝かしい結晶だった。これが俺達がLVUPし、スキルを進化させる為に必要なクリスタルなのだ。
「何もなかったな……罠も何も」
「何もないに越したことはないじゃないですか……」
リノアは呑気な事を言う。確かにその通りではある。
「それもそうだ……。確かにリノアの言う通りだ。だけど、このまま何もなく、目的のクリスタルが手に入るとは思えないんだよなぁ……」
貴重なアイテムがそのまま放置されるなんて事は普通ないだろう。簡単に手に入るものなら、誰かが既に入手してなくなっている。世の中はそういうものだ。価値ある物が簡単に手に入る程、生温いものではない。それが現実だった。
「これが私の話していたクリスタルですね……」
リディアは躊躇なく、クリスタルに手をかけた。
――と、その時の事であった。
ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー! ビー!
塔の中に、けたたましい警報音が鳴り始めた。そして、それと同時に声が鳴り響く。
『侵入者がクリスタルを盗難しました! これより防衛機能を発動します!』
『侵入者がクリスタルを盗難しました! これより防衛機能を発動します!』
『侵入者がクリスタルを盗難しました! これより防衛機能を発動します!』
『侵入者がクリスタルを盗難しました! これより防衛機能を発動します!』
機械音声がしつこいくらいに、繰り返される。正直、うるさかった。耳に響くのだ。
「やはり……ただでクリスタルはくれないようですね」
リノアは身構える。
「ああ……その通りだな」
俺も身構えた。とりあえずの準備として【建築(ビルド)】スキルで『ビルドハンマー』を作って、構えておく。何が出てくるかはわからないが、俺は俺でやるより他にない。
天井は隠し部屋になっていたのであろう。天井の隠し部屋を破り、一体の機械人形が姿を現す。両手に刃物を構えた、明らかに危険そうな機械人形だ。とても話が伝わりそうではない。幸いな事に、俺達のパーティーには【大賢者】のスキルを授かったリノアがいる。彼女は雷撃魔法(ライトニング)を使う事ができる。
あの手の機械人形は大抵の場合、雷属性が弱点である。魔法で弱点を突けば、効率的に倒す事ができるだろう。恐らくだが……。
それより前に、奴の注意を何とか引かなければならない。機械人形と俺達の間合いは既に大分近くなっていた。奴の刃がすぐに届く位の距離。俺は何としてでも彼女を守らなければならなかった。リノアを失ったら俺達にはもう、勝ち目はないと言えた。
「リノア……俺が奴の注意を引き付け、時間を稼ぐ。だから、その隙をついて、雷撃魔法(ライトニング)で奴を攻撃してくれ」
「わかりました……グラン様」
『侵入者を発見しました……これより攻撃します』
機械人形から、機械的な音声が聞こえる。
「行くぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
俺は『ビルドハンマー』を振りかざし、機械人形に殴り掛かった。
――しかし。機械人形の動きは俺の速度を余程上回っていた。
「なっ!? なに!?」
機械人形は俺の背中に回り込む。視界から消えていなくなった。振り返った時には既に、その凶刃が放たれていたのである。
「う、うわっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
俺は何とか、『ビルドハンマー』でその攻撃を受け止めるが、強烈な勢いで壁に叩きつけられてしまう。
「グラン様!」
リノアが声を出す。
「お、俺に構うな! リノア! 雷撃魔法(ライトニング)で攻撃するんだ! 他に勝つ手段はない!」
脳震盪になり、意識を失いそうになりつつも、俺はリノアに言い放つ。
「わ、わかりました! 雷撃魔法(ライトニング)!」
リノアは雷撃魔法(ライトニング)を放った。凄まじい雷撃が機械人形を襲う。
ギギギギギギ! ビー――――――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
どうやら、リノアの放った雷撃により、機械人形の回路がショートしたようだ。異様な音を立てて、機械人形は動かなくなる。ぷしゅーと、煙を出して果てたのだ。
「やったな、リノア……ううっ」
「グラン様! ま、待っていてください! 今、回復魔法(ヒーリング)をかけますからっ!」
リノアが慌てて俺に駆け寄ってくる。そして回復魔法(ヒーリング)をかけた。
ともかく、こうして俺達は目的のクリスタルを手に入れたのだ。俺達は一旦、家に帰る事になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます