竜の花嫁。竜舎に見習いとして来たメスガキ、竜と一緒に育ったので竜語で会話し竜語で魔法を使い無双。でもここは科学技術を発展させてはならないダイソン球上の平面世界だった
@piyopopo2022
第1話ドラゴンテイマー
アルピノ竜の独白
竜や鷹と言った生物は同時に複数の子育てをしない。
卵は複数産むが、孵った雛の中で弱い者を間引いて行き、体も大きく病気にも強い一羽だけを育て上げる。
かく言う私も親竜に間引かれて死ぬはずだった。
兄弟との餌の争奪戦に敗れ、衰弱し体調を崩し、熱を出して病魔に抵抗したが巣から捨てられた。
自然の中ならそのまま死を迎えられたはずなのだが、私の親竜は人間に飼われている竜だったので、捨てられた雛は竜の飼育員に引き取られ育てられた。
人間の子供と同じベビーベッドの中に入れられ、それからも手厚い看護を受けられたが、高熱は収まらず病魔や死神が這いより、私の命の炎は消えようとしていた。
そこで我が半身である妹は、何をどうやったのか分からないが病魔と死神を撃退し、私の命と魂の一部を交換し合い、命の炎を再び点火させてくれた。
幼児が浄化呪文や回復呪文、復活の呪文を唱えたとは信じられないが、我が半身は現にそうしたのだろう。
それからは共に育ち共に遊び、時には喧嘩をして仲直りをした。
乳母として育ててくれた姉竜に竜の言葉を習い、山の向こうの竜の巣まで飛んで同胞とも会い、長老や竜達の加護を貰い、一生継続する物理や魔法の防御魔法を掛けて貰った。
長老達からも竜語の魔法を習い、竜としての生き方考え方、戦い方も習った。
これは我が半身の物語、過去の英傑のように竜と魂や命を分け合った人間が、竜の花嫁となり立身出世する英雄譚。
竜騎士団幼竜舎
「ねえ、コイツってもう15歳なんだって~? 5歳の竜より小っこいじゃん」
「キモーイ、こんな小さいのが許されるのは小学生までだよね~」
竜の檻の前で姦しく話す飼育員の少女達。
小さいとはいえ竜なので子象並みの大きさで、人間の家では飼えなくなった頃から幼竜舎に預けられている。
他の赤黒い竜や、属性による色分けでもない、真っ白なアルピノの竜。
目にも色素が少ないのか青く、鱗の下の血の色が見えるので腹の方は赤く、飼育員の少女達も気味悪がって近寄らない。
「ヤ~~、ムリ~~、キモーイ」
小さいと侮っている割には竜の手が届く距離に行くのは無理らしく、餌やりの規定に反して器を投げるようにして放り出し、清掃用の箒で突いて奥に動かすと、中身は大半糞尿まみれの床の上にぶちまけてしまった。
「ガァーーー!」
「キャーーーッ」
竜に威嚇されると姦しい少女たちは逃げて行った。
決められた期間で寝藁も交換せず、幼竜を外に出して日光浴や水浴びをさせ散歩や運動させている間に清掃する決まりも守らず、今日も餌を床に撒いて行った馬鹿の集団。
酪農の経験があるだけの子供が見習いとして連れて来られ、危険手当や高額な手当ても元受けや親方にピンハネされ、七次下請けぐらいから雇用派遣されている「食われても困らない」連中。
ここでも使い物にならなければ、夜の仕事にでも落として売春でもさせるしかない。
髪型や服装にバッグなどの持ち物、外見だけは気配りし、服と装飾品の値打ちで人間の価値が決まると思っている無能が雇われていた。
数十年前に新設された竜騎士団は、戦力として重要な精鋭部隊で、空の輸送に携わる飛竜部隊と、炎のブレスも使える栄えある火竜騎士なのだが、竜と親交を深められる特殊な人物のみ在籍できる場所。
貴族の次男三男に与える名誉職なら騎士団や魔法騎士団があり、この部隊は酪農家出身の平民も多い、政治的には位が低い部隊でもあった。
竜騎士団詰所
竜舎前を通過する親子。若い頃から竜の世話係をしていた父は、今年から見習いとして働かせる事になった15歳の娘を連れ、貴族もいる竜騎士団詰所を訪れた。
竜の世話をする時の作業着である、革製の頑丈なオーバーオールを着た父親の後ろを歩いている娘も、同じ作業服を着せられている。
娘は短髪の赤毛で、適当に切り落としてから何一つ手入れしていないボサボサの髪。
食べ物が悪いのか寄生虫まみれの世界なのか、ガリガリで貧乳で背丈も低い。
家に女手が無いので服装や装飾品など女らしい所はどこにもなかったが、持ち前の陽気さと気安い態度で、ネイティブの竜語を使って竜達に挨拶をした。
「ピューイ、カルルッ、カルル、コカッ、カッカッカ」
お早う、元気か? 縄張りを通る、これから私もここの住人、などと話すと本物の竜語で返答があった。
「ピューイ、クルルッキュキュキュカッカ、キュッキュッ」
「グルル、キュキュー? カルルッ、カカカッ」
簡単な挨拶以外にも、幼竜の扱いが悪い、寝藁を変えて貰えない、糞尿や虫で一杯、何とかしてやって欲しいなどなど親竜世代から話しかけられた。
娘の父親も動物には懐かれる体質で、長年の勤務の成果で身振り手振りなら何を要求されているのかは分かったが、流石に娘のように竜と直接会話するのは不可能だった。
「クルルッキュキュ? カカッ、カカッ、クリク、チッタ」
ひでえなあ、すぐに変えてやる、と返答していると、人間用の建物に着いた。
「おっ父、ここが竜騎士団か?」
「ああ、これからおめえが世話んなる団長様やら竜騎士の皆さんがいるとこだ、ちゃんと挨拶しろよ」
「あぁ」
父親は腰をかがめて頭を低くして、上級貴族である騎士団長に決して目を合わさないように注意してから、裏口を開いてコソコソと入室した。
「失礼しますだ」
父親と同じ平民で農民で動物の世話しかしてこなかった娘が、貴族に対してまともな挨拶など出来ようはずもないが、娘の頭を抑え付けて頭を下げさせながら入室した。
「やあストナ、その子が娘さんか?」
まず裏口近くで、板札を取り出していた団員に声を掛けられた。
「へえ、左様で、今日からお世話になります娘のカーチャですだ。ほれ、皆さんにご挨拶しろ」
「ピューイ、クルルカカカッ、キュキュキュ、キッキッ」
いきなり口笛のような竜語で挨拶した娘を見て父親が驚き、デスクワークをしている団員達も目を丸くしたが、すぐに笑顔になった団員から返答があった。
「ピューイ、カッカッカッ、キュキュ」
「ピューー、クククッ、カカッ」
団員たちはネイティブな発音はできなかったが、騎乗する竜と会話する必要があるので一部竜語を理解していて、簡単に朝の挨拶を返した。
「こらっ、騎士様になんて口を叩きやがるっ、普通に喋れっ」
まず父親が娘の頭を軽く殴り、上から抑え付けて頭を下げさせて謝罪もさせる。
「すんません、皆さん」
そこで一番奥にいる上級貴族の騎士団長からもお声が掛かった。
「待て待て、そう怒るものでは無いぞ。見事な竜語の発音だった、この騎士団に相応しい挨拶だ。確か竜を乳母として、他の幼竜とも兄弟のように育ったのだったな?」
「へえ、人間の言葉はこの通りなんでぇ、竜語の方が失礼が無いんでねえかと思ってぇ」
娘も頭を掻きながら、父親と同じ訛りが強い人間語で話し恐縮する。
「ははっ、そうか。ピュピューイ、クルルキュッキュキュッコッコッ」
騎士団長からも、ネイティブな発音ではないが、文法的にも単語にも間違いがない丁寧な返答が返された。
「キューーイッ、クロロロ、カカカ、チュッキュッ、カオー、リュクル、ター」
娘から全員に向けて、始めまして、これから宜しくお願いしますと竜語で挨拶をすると、団員や団長よりも先に外の竜舎から一斉に返事があった。
「キュキューー、クリル、カカカッ、ピユーーーイ、カキューーイ」
「ピリューク、クワワ、クチャク、カリューーク」
また団員たちが驚いて目を丸くして、鳩が豆鉄砲でも食らったようになった。
「おい、外から返事があったぞ?」
「部屋の中の声が聞こえたのか?」
「まさか念話してるのかっ?」
外でもギャーギャーと騒いでいるので部屋の中の挨拶が聞こえるはずもない。
団員も団長も、目の前の娘と竜達の間には心の線が繋がり、飛行中の風切り音の中や、離れて飛んでいても自由に会話できる竜と同じ存在ではないかと疑いだした。
「素晴らしい、団員にもそんな芸当ができる者はおらん……」
「話している意味も全部分かるのか?」
「今度俺の竜が何言ってるのか翻訳してくれ」
驚異の新人の能力に団長も驚き、団員も近寄って話し掛ける。
「通りがかりにも言われましただ、何でも~「幼竜の扱いが悪い、女の世話係が怖がって近寄れないで床に餌を投げられる、寝藁も変えて貰えない、糞だらけで虫だらけ」だそうで~、騎士団の親竜に頼まれましただ」
全員が固まって息を飲み、竜が使う言葉や単語に、そこまで深い意味があるのだと初めて知らされた。
「そんな詳しく話せるのか……」
「竜語にそんな単語まであるなんて」
簡単な挨拶や、右に行け、下に降りろ、といった簡単な会話しかできない一同。竜騎士団の竜にそこまで高い知能があるとは思ってもみなかった。
「へぇ、竜は頭がいいのでそれぐらい喋れまさあ」
「幼竜舎がそんな汚いなんて、ストナ、すぐ見に行こう」
「へい、旦那」
挨拶もそこそこに騎士団員数名が席を立ち、父親とカーチャも翻訳要員として幼竜舎へと連行された。
幼竜舎
「何だ? この汚さと臭さは、誰も気付かなかったのか? 飼育係を呼べっ」
「へいっ」
成竜の飼育係であるストナが、近くで作業していた娘や見習いに声を掛け、幼竜舎の飼育係である女達が呼ばれて次第に集まって来た。
「なんじゃあこりゃあ、病気にでもするつもりかぇ?」
カーチャが見ると、まだ虎サイズの幼竜や、象かサイのように大きな子供の竜が、汚い檻の中で閉じ込められている。
卵から孵ってすぐなら人間の家でも生活できるが、数年経過してこうなると巨大過ぎて一緒に暮らせなくなる。
「キーーーッ、ギャアアアア」
「カアアアアアッ、ウオオオオン」
怒っている幼竜の鳴き声だけでも、女手が多い飼育係達が怖がって青い顔をして、気が弱い数人が屋外に逃げて行く。
「ここの責任者は誰だっ? こんな状態で放っておいたのか?」
騎士の怒鳴り声からは隠れたが、周囲の視線に押され、渋々といった感じで女中頭が前に出た。
「お、女手では大きな檻は開けらんねえし、こっただ大きな竜、怖くて外に出せません。親方にゆるしてもらって、通路側と壁の後ろから汚れた寝藁だけ出してます」
出動や訓練がある成竜と違い、外の散歩程度しか許されていない幼竜達。汚い竜舎で閉じ込められ、もちろん散歩などもさせてもらっていない。
飼育係の狭い世間だけで話し合って盛り上がり、段々省力化して最低限の作業に減らし、逃げるようにして竜舎を離れていた現状。
「お前たちの仕事だろうが、何をしていたっ?」
「わたすら、牛や羊の世話しかしたことありません、こっただ大きな竜を世話するなんて聞いてません」
雇用契約の時点で問題があったようで、酪農農家から働きに出た娘が騙され、勝手に恐ろしい竜の飼育員にされていた。
バイトや派遣に経営者的な目線を持てとか、責任ある態度や勤務を要求するのは無理な相談である。
「おう、あんちゃん、久しぶりだなあ、すぐに出してやっからな」
「キャーーー、カキュウ、クワワワワ」
カーチャは一緒に育った白い竜を見付け人間語で挨拶したが、汚い生活で元気が無さそうだった。
「鍵かかってんのか? コカークケケコ(開錠)ほれ、開いたぞ」
竜語で生活魔法を唱え、少女とは思えない剛力で木材で組まれた檻の扉を片手で持ち上げて開いた。
騎士には見つからなかったが、竜語で竜魔法を使う所を見られていたらただでは済まない。
「お~い、他の奴らも汚い寝藁、足でつかんで外に捨ててけろ」
他の檻も勝手に開錠して行き、放牧するには危険すぎる幼竜を外に誘導して、汚れた寝藁も自分で外に出させていく。
「何してんのっ!」
飼育係の少女の一人が青い顔をして素っ頓狂な声を上げ、他の少女も悲鳴を上げて逃げて行った。
「勝手な事しないでっ、ここにはここのやり方があるのよっ!」
平手打ちしようとした飼育係の少女だが、カーチャに掛けられている絶対防御呪文が発動し、空中に光る魔法陣が開いて少女の腕を止め、運動エネルギーを倍加させて返し反作用で吹き飛ばす。
「いやああああっ!」
数メートル飛ばされて地面を滑り、擦過傷だらけになった少女。幼竜達も今まで散々な目にあわされてきた意地悪な少女に仕返しをするため、ドスドスと音を立て足取りも重く近寄って踏み、蹴ったり爪で引っ掻いたりして復讐を果たした。
大きめの子竜も屋外に出て、悲鳴を上げながら外に逃げ出した少女たちにも空から追い付いて、羽を広げて通せんぼをし、追い付いてきた仲間達と一緒にサッカーボールキックを入れたり軽く炎を吐いて今までの復讐した。
「キュカッ、カールカールカール」
カーチャが「そのぐらいにしておいてやれ」と鳴くと兄弟姉妹の子竜達は引き下がり、カーチャを母親だと思っている幼竜は、目を輝かせながら一目散に親の所に集結した。
倒れている少女達もこの世界の機能で怪我が修復され、体から蒸気が上がって傷が治って行く。
「ほら、掃除すっぞ、動け動け、キュカー、カッカッカッ、コココッ」」
本来の飼育係である少女達は怪我もしていて服もボロボロ、泣いてしまって立ち上がれない者までいて使い物にならなかったが、幼竜までが汚い寝藁を運び出し、カーチャの指示通りにてきぱきと働き、堆肥にもならない腐った寝藁を炎のブレスで焼き払い、糞尿を水魔法で洗い流し、虫だらけの竜舎を燻して氷漬けにして殺虫した。
「凄い…… 竜使い(ドラゴンテイマー)だ」
「この子竜は魔法まで使えるのか?」
竜使いの少女と魔法を放つ子竜を見て、飼育員の少女の惨状よりも驚きの方が勝った騎士達。
報告を受けた騎士団員と団長までが幼竜舎に集まってしまい、竜語だけで自由に竜を操る少女を見て驚きの光景を確認した。
普通ならバラバラに動いて暴れまわり、人間語での命令など受け付けない子竜達が、軍隊のように一糸乱れぬ行動をしている。
そして魔法が使える子竜達と、魔法が使えない竜騎士団の成竜との違いを比べてみた団長。
「カーチャ、何故この子竜は魔法が使える?」
呆然とした騎士団長の質問にも、当然のことのように答える。
「この子たちは山の向こうの火竜山の巣で、本当の親竜とか成竜に魔法を習ってたんでさぁ」
一匹だけの子竜を育て上げたとしても、事故や病気で子供を無くす親は沢山いて、間引いて見捨てた子供の本当の親だと名乗り出ることはできなくても、人間の娘を親だと思っている幼竜だとしても、自分の鳴き声に答える子供や、子供の鳴き声を覚えている母親は、どうにかして自分の資産や能力を子供に伝えたいと願った。
「君もそこにいたのかね?」
「へぇ、子供の頃は放置子だったんで、あんちゃん(竜)と一緒に巣まで出かけて泊まり込んで、結構いいもん食わせてもらってました」
血が繋がっていない親竜も、子供が成せなかったり子供を亡くした親竜は、まるでペンギンの番(つがい)が親を亡くした雛を引き取ったり、他の番から奪ってでも子育てを継続するように、死んだ子が帰って来たかの如く幼竜やカーチャを甘やかして育てた。
言語的にも竜語で思考する時には高い知能を示せても、母親を早くに亡くして父親からも人間語では余り話し掛けられず、里の子供達と会話する程度で知識レベルの低い会話をしてきたので、人間の言語では高等な思考をすることもできないカーチャ。
過去にも日本制圧下の台湾や朝鮮で、日本に留学して日本語で高等教育を受けた人物は、難しい意味の単語が翻訳されていない母国語では、高度な思考をできないと証言されている。
鷹匠なども巣から鷹の卵を盗み、孵った雛が人間を親鳥だと思い込む性質を利用して鷹に狩りをさせる。
同じように巣で間引かれた幼竜を引き取って連れ帰ったカーチャは、子沢山の母親になっていたが、山から餌の供給や資金提供は途絶えることはなく、普通の貧しい農家よりは恵まれた環境で育った。
「竜に育てられた、だと?」
「ここの成竜は、大きくなってから親に魔法を教わってないんで使えないだけで、今からは難しいですけど、本当なら使えてもおかしくないはずでさぁ」
運送用の飛竜、ワイバーンのような種類は魔法が使えないのは分かっていたが、火竜と呼ばれる大型種で、人間が騎乗して炎のブレスも吐く戦闘用の竜騎士となる種は、本来魔法が使えるはずだが、騎士団の竜は全て魔法が使えなかった。
「おらが竜魔術使う時には…… おっと」
普通の人間には知られてはいけない内容を口走りそうになり、口を押えて黙り込む。
「今、竜魔術って言ったよな? 知ってるのか? 君も使えるのかっ?」
もう団員にも詰め寄られ、両肩を掴まれて問い質される。
「へぇ、まあ少しは……」
子供の頃から人間に育てられている竜には訛りがあり、人間に育てられた象や馬のように、野生種とは会話が成立しない場合がある。
成長して野生に帰された場合でも、単語の発音や会話文を後で覚えられたとしても、生活様式があまりにも人間臭く、野生種の群れとは共生できない場合が多い。
さらに騎士団の竜は、親から魔力の使い方や魔法は教わっておらず、肝心の継承が行われていないので魔法が全く使えない。
この娘の場合、乳母である姉竜や兄弟竜たちと山に遊びに行き、長老とも知り合い、他の竜からも加護を貰ったり防御魔法を掛けて貰ったり、あらゆる優遇を受けていた。
「言葉だけで竜を使役できるのは君だけなのか?」
竜語だけで子竜も幼竜も動かす特殊性に団長も問い質したが、カーチャは軽く答えた。
「うちにいる妹とか弟なら結構喋れて仲もいいですから、生意気なクソガキどもも働かせられますよ、その辺りで伸びてる使えねえ女より、よっぽど使えまさぁ」
団長の中の構想では、倒れていたり泣いている少女は雑用にでも使い、カーチャの妹や弟も雇いたいと思った。その弟妹というのが全員人間なのか竜なのかは分からなかったが。
「弟妹連中も、ここで務められるなら一度連れてきて欲しい」
「はあ」
「君も飼育員では無く、竜騎士の方が向いているかも知れないな」
入団時の支度品や鞍などの出費に耐えるには、資産家や貴族の方が有利ではあるが、竜が背中を許して飛行まで出来る人物は限られているので、団長はこの娘を養子にしてでも竜騎士団に欲しいと思った。
「おらを載せてくれるのは、あんちゃんか姉ちゃんぐらいだでなあ、まだ子供達はちいせえし」
祖母に懐いていた姉竜は騎士団に入らず、カーチャの家でもっと小さい竜の面倒を見ている。
「うむ、君の兄にあたる白竜とのペアで良い、竜騎士団に入ってみないか?」
「はぁ、雇ってもらえるならどっちでも」
カーチャは飼育員見習いでは無く、竜騎士団見習いとして採用された。
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