『アッカ・・アッコン陥落の嘆き』を謡う吟遊詩人

のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます

第1話 悲劇の記憶・・記憶の彼方で・・

最後の十字軍の国イエルサレム王国 アッカ、アッコンの地

そのアッカ、アッコンの陥落 戦火にとり残された子供達は泣いていた

「パパ、ママああ」「エドモンド兄ちゃん 怖い」幼い子供達が泣いている


・・静かに遠い昔の記憶 その時の情景を思い出す

瞳を閉じて 静かにリュートをつま弾きながら吟遊詩人の少年は謡う 

「アッコン陥落 あれは最後のイエルサレム王国だった」


「滅ぼした彼等はマルムードの宗主達は残酷だった」 


「百年前のリチャード獅子心王の敵だった慈悲深いサラデイン

情の深いサラデイン サラーフ・アッディーンとは違い、残酷だったから‥」


「古代ユダヤ王国の民人のように 民人は情け容赦なく殺された

あるいは奴隷として連れ去られた」


散っていった・・イエルサレムに作られた国々 最後の王国


それは吟遊詩人の少年が謡う遠い記憶の出来事


終わりの時に 聞こえるのは 喪う者たちの嘆きの声

それは嘆きの歌声


十字軍という名のもとで熱狂する人々が 作り上げし王国

聖なる地 祈りを捧げた者達 

今は滅びの時を迎えた エルサレムの王国 最後のアッコンの地


護り手である中の

3つの騎士団の騎士達も国の兵士達も多くが力尽き果て・・

聖ヨハネ騎士団、テンプル騎士団 チュートン(ドイツ)騎士団


遠い地シオン(エルサレムにある丘、エルサレムの別名)での夢

シオンの地から追われてゆく 奪い返したかった、あのシオンの地


パレスチナ アッコンの地で踏みとどまり、百年が過ぎて・・

だが、戦で焼き払われて、滅びゆく


敵に追われて、生き延びた逃げまどう人々は 追われて 

昔、住んでいた海の彼方の国々へと押し戻される 難民となって去ってゆく


ある者達は殺され 血の海に沈み 若き娘や子供達は囚われて連れ去られる


生き延び、逃げ延びた者達は 互いに慰めあいながら

逃げる船の中で揺られていたのだ


古(いにしえ)より これらは繰り返されてきた事

幾つもの王国が生まれては滅び 消え去ってゆく


例えばシュメール人の末裔、ハンニバル将軍のカルタゴでも・・

ソロモン王国、古代ユダヤ人達の王国でも・・


吟遊詩人の少年は楽器のリュートをつま弾きながら

最後の砦となったアッコン陥落の歌を謡っている


まだ、火縄銃も大砲もない それよりも ずっと前の時代の御話

聖ヨハネ騎士団は後にロドス騎士団とも呼ばれて

彼等のエルサレムの最後の本拠地を失い、エーゲ海の島々で戦っていた頃

まだマルタ島に辿り着く前


謡いながら 吟遊詩人の少年は思い出す

二人の幼い子供の事を…


戦場、人々の死体 血の海と悲鳴の中

物陰に身を潜ませて 震えて怯えた子供達

「パパ・・ママ・・エドモンドお兄ちゃん怖い、怖いよ」

「声を出した駄目だよ マリアン見つかるよ」


小さな二人の兄妹の子供は見つからぬようにと崩れた壁の傍でうずくまっていた


何処からともなく、現れたのは吟遊詩人の少年 艶やかな長い黒髪の子

「おや、そこで隠れてるいのは 誰かな うふふ」


「貴方は 前に会った? 祭りの時の吟遊詩人のお兄ちゃん」 

にっこりと笑顔の吟遊詩人

「うん、そう 良く覚えていたね」

長い黒髪を編みこんで 変わった衣装を着た少年

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