第11話 学園祭スクランブル


「れ、蓮ちゃん?」


「が、学園祭実行委員になりました藤ヶ里です……」

「同じく加村です」


(ちょっと先輩?! 私、実は生徒会長さんを間近で見るの初めてなんですが、何ですかあの顔の小ささ! 西洋人形ですか?!)

(ヒソヒソしないの、環!)


「は、はい。生徒会長の久々宮です。立候補していただき頼もしく思います。ありがとうございます」


(アヤネちゃん、キリっとしてるけどやっぱりちょっと驚かせちゃったかな……? 環も一緒だし、言いづらくて事前に言えなかったからなぁ)



「会長!静早水川しずはやみがわ女子学園の方がお見えになりました」


「わかりました。では皆さん、行きましょう」



(ひゃー……優雅ですねぇ)

(私も、このアヤネちゃんは新鮮かもしれない……)







逢杏あいきょう女子高校の皆さん、この度は誠にありがとうございます。どうぞ宜しくお願いしますね。まずは学園へ、ご案内いたします」



「はぁー。送迎バス付きとは、贅沢ですね。さすが静早女子」

「会場が向こうの学園で、私たちの学校は人を貸すだけって、なんか上手いこと利用されてる気分だなあ……」

「えー? 私としては綺麗な学校でお祭りが楽しめて、静早に感謝ですよー。それよりも」


「ん?」

「生徒会の皆さんとは、別行動なんですね。残念です。私が近くについて、先輩と生徒会長さんを見守る絶好のチャンスだと思ったのに……」

「アンタやっぱりそういう事考えてたのか」


「ねぇ先輩? 生徒会長さんとふたりっきりで共同作業……とはいかないまでも、一緒のお仕事ができて嬉しいんじゃないですか?」

「それは……嬉しいです」

(アヤネちゃんは他の生徒といるときは生徒会長モードだから、ちょっと寂しいけど)


「あ、もうすぐ着きますよ。えへへ、楽しみですね。打ち合わせ、張り切って行きましょう!」

「べつに私たちが仕切るわけじゃないのに、環ったら……ふふっ、おかしい」





「ーーー-と、なります。それでは15分間の休憩を取ります。休憩後は、今から配る班分け表に従って集合してください」


「先輩、同じ班ですよっ」

「両方の生徒を含む、三人一組みたいね」

「じゃあもう一人は静早の生徒さんですか。あ、私ちょっとだけ、お花を摘みに」

「行ってらっしゃい。迷わないでね」

「迷いませーん」





「蓮ちゃんっ!」

「わぁっ?!」

「蓮ちゃーん、びっくりしたぁ! まさか蓮ちゃんが実行委員に立候補してるなんて!」

「ア、アヤネちゃん、近い近い」


「もー蓮ちゃん、もしかして私をびっくりさせるために、黙ってたの?」

「ま、まぁね」

「わああ、嬉しいー」

「……うおっふァ……」


(抱きつかれてる?! これは私も抱き返すべき?!)


(いや、ここ学園内だから! かなり人目があるから!)


(というかそんな深読みしてる自分が落ち着け)


(まず、こんなにくっついてる所、環に見られたら絶対からかわれる)


「ねぇ、一緒に来た子は、後輩の子?」

「あ、うん。部活の……」


(そういえば私、環にはアヤネちゃんの話ばかりしてるけど、アヤネちゃんには環のことあんまり話してないな)


「そっか。蓮ちゃんが誘ったの?」

「え。えーと……」


(誘ってきたのは環だけど、環は私に協力してるだけで……。それを正直に言うと、これまでのいきさつを話さないと変だし……結果的に私がアヤネちゃんを好きなことがバレちゃう?!)


「会長! すみません、静早の会長さんが話があると……」

「あっ、はい、今行くね」

「失礼しました! お話中でしたか!」

「いいの。呼びに来てくれてありがとう。ごめんね蓮ちゃん、また後で」


「あ、うん、お疲れさま……」


(よく考えたら、環とアヤネちゃんが同じ場にいるのって、結構危なっかしくない?)


(環がもしうっかりポロっと喋っちゃったら)


(いや、環に限って、わざと秘密を漏らすわけないと思うけど、それでもあの子、たまにポンなところがあるから)


(他人の口から告白ってオチだけは格好悪すぎる!)


「……というか、環、なかなか戻ってこないな」







「久々宮さん、休憩中にすみません。少々予定が詰まっていまして」

「構いません。今のうちに出来ることがあれば、済ませてしまいましょう」

「助かります。今は、部活動の出展届けに目を通していたのですが、問題がいくつかありまして……」

「問題、ですか」

「まずは、今年の映像研究会の作品なのですが、提出してもらった脚本を見たら、その、内容が……」

「?」

「女性同士の恋愛ラブコメなのですが、表現が少々過激で……」

「……!」

「学内で発表するにはいかがなものかと、個人的には思うのです。止めさせるべきか、生徒の創作意志を尊重すべきか、迷っておりまして」

「な、なるほど」

「もし宜しければ、脚本のコピーをお貸ししますから、ご覧になってくださいませんか。あなたからも、率直な意見を聞かせてください」

「わ……私の意見で宜しければ」

「よろしくお願いします。では、次は食品のことなのですが……」





「加村さん! やっぱり! あなた、加村環さんでしょ?」

「は、はぁ……そうですけど……」

「南女子中のバレー部だった加村さんで、間違いないよね!」


「静早の生徒さん……? え、え……えっと……あなたは……?」

「はぁ?!」



「覚えてないの?! あなたにバレーで散々負かされた、元北女バレー部の有原冴衣を!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る