復讐 9

 九路は鉄板入りの安全靴で二九田の顔を蹴り続けた。足が疲れると、金属バットを振り下ろし続ける。


 段々と二九田の声がしなくなり、ぶふーぶふーっと血を吐きながら呼吸をするだけだった。


 拳銃を構え、背中を狙う。パァンと音がして、二九田には致命傷が出来た。


 九路は最後の標的の猿ぐつわを外す。涙を流しながらハァハァと荒い息をし始めた。


「やぁ、不二伊ふじいくん。君はこのクズ共の後ろに隠れて僕の悪口を言っていたね」


「ち、ちが、ちがう」


「何も違わないよ、僕は君の口が嫌いだ」


 そう言って取り出したナイフをおもむろに不二伊の口に突っ込んで、頭を押さえつけかき回す。


 声にならない声を上げて不二伊はのたうち回った。


「君は僕に触るとばい菌が移るって言ってたよね。移してあげるよ」


 九路は濃硫酸の入った瓶を持って不二伊の顔に掛けた。暫く待つと苦しそうにうーうーと呻いていた。


 腕や背中、足にも切れ込みを入れて濃硫酸を流し込む。その度に体がビクンと震える。


 死にかけの三人の前で九路はタバコに火を付けた。ふぅーっと一吸いすると、ニコチンが体に染み渡る。


 復讐は何も産まないと言うのは馬鹿だと思っていたが、いざやってみると、確かにスッキリはする。だが、同時に虚しさも感じていた。


 こんな奴らに自分の人生はメチャクチャにされ、復讐で人生を奪ってやった。


 タバコの火を消すと、九路はガソリンの携行缶を持ち、一人ひとりに丁寧に浴びせた。


「何で、何でこんな事になっちゃったんだろうね」


 イジメによって九路は過去も現在も未来も奪われた。本当はクラス全員を道連れにしたかったが。


 ふと夜空を見上げる。木々の隙間から見える空は美しいものだった。


 もっと惨たらしく殺してやろうと思っていたが、実際やろうとすると中々出来ない。


 あぁ、あれだ、腹減ってる時に無限に食えそうな気がしても、実際食べるとそんなに食えねぇのと似てるなと九路は考えていた。


 また新しいタバコを取り出すと、火を付ける。深く吸ってから、それを放り投げた。


 一気に引火し、3人を火だるまにする。もう何も聞こえてこない。


 何だか一気に疲れが出た。九路は燃え盛る炎を見ながら、木にもたれかかり目を瞑った。

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