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 まずいな、ここは僕が間に入って仲を取り持たないと……。


 ただし、あくまでも中立に。どちらかの肩を持たないよう意識して気をつけないとね。そしてうまく話を逸らさなきゃ。


「まぁ、まぁ! とにかくレインさんが無事で良かったよぉ! ミューリエも熊を倒してくれてありがとう! あの鍋、美味しかったよっ♪」


 僕は必死に笑みを作って、ふたりの仲を取り持とうとした。


 もしかしたら顔が引きつっちゃってるかもだけど、それをどうにか出来る心の余裕なんてないし、そこまで器用じゃない。これが今の僕に出来る精一杯だ。


 これでなんとか場が和んでくれたらいいんだけど……。


 でもそんな僕の願いも虚しく、レインさんとミューリエは冷たい瞳を僕に向ける。しかもなんだか今までよりも空気がピリピリして、危険な香りが濃くなっている。



 やばい……これは……やらかしちゃったかな……。


 背筋に冷たいものが走る。


「……アレス、何を焦ってるの? 別にあたしはミューリエと言い争いをしようなんて思ってないわよ? ガキじゃあるまいし、そんなの疲れるだけ。むしろ部外者に口出しされる方がイラッとするんだけど?」


「ま、それに関しては私も同感だな」


 …………。


 ふたりが怖くて目を合わせられない。余計な口出しをするべきじゃなかった。僕も鍋にされて食べられちゃうかも――なんてっ、バカなことを考えてる場合じゃないッ!


 あぅ……奥歯がガタガタと振るえてきた……。


 こうなったら泣いて土下座して、許してもらうしか――


「だが、アレスの私たちに対する気遣いも分からんでもない。よって今回は不問にしてやる」


「あたしも許しちゃうっ♪ っていうか、怒った振りをしてちょっとからかっただけだし」


 ミューリエとレインさんはクスクスと微笑んでいた。


 ……ど、どうやらふたりとももう怒っていないみたい?


 いや、最初から本気で怒っていたわけじゃなさそうだ。それを悟り、僕は思わず安堵の息を漏らす。


 それにしても命拾いしたというか、冗談でもこういうのは寿命が縮むからやめてほしい……。


「さて、ミューリエにはあらためて御礼を言っておくわ。アリガトね。もし助けてくれなかったら、あたしは間違いなくあの世行きだったし」


「気にするな。旅先ではお互い様ではないか」


「貸し借りもチャラになったことだし、ね? ちなみに鍋をご馳走になった件はサービスでいいんでしょ?」


「フッ、そうだな」


「じゃ、あたしは先を急ぐから」


 そう告げると、レインさんは走って先に行ってしまった。ただ、少し進んだところで立ち止まり、こっちを向いて笑顔で手を振ってくれている。


 進む方向は同じだから、またいつかどこかで会えるかも。



 ――その後、僕らも再び街道を歩き始めた。試練の洞窟はもうすぐだ。


 でも僕はそもそも洞窟という場所は書物で読んだ知識しかなくて、中に入ったことどころか見たことすらない。だから現時点では期待と不安が半々くらいだ。


 そこでは何が待ち受けているのだろう? なんだか緊張してきちゃった!



 NORMAL END 3-1

 

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