25.蹴上駅 南禅寺前

(南禅寺じゃいおらぁ!)


俺は蹴上駅に着いた。出口を出ると目の前に木々が見えるがここには行かずに左斜め前にある横断歩道を渡って左に曲がる。そこをまっすぐ行くことになる。比較的大通りであるので歩道もしっかり整備されていることがわかる。ここら辺はレンガ造りのトンネルがちらほらと存在しているのでそれを見てみるのもオススメする。レンガ造りであるのはやはり南禅寺の影響だと俺は考えている。ここは割と大きな観光スポットであるが俺は結構な頻度で訪れている。嵐山はほとんど毎回行っているがこちらも負けないほど来ている。こちら側に用がなければ寄らないけども近くまで行けそうなら寄る。それくらい好きなお寺だ。


(何度見ても飽きないのはなぜだかね)


ここで迷うことは多分ない。多くの人が南禅寺に向けて歩いているからだ。南禅寺でなければ「線路」目当てだと思うのでどちらにしろ迷わない。線路とは何なのだと思うのだが、それは是非調べて欲しい。写真を見ればわかる人も少なくないはずだし、線路という事には間違いないのでこれ以上の情報を詳しく言うのは後々機会があればということにしておく。ちなみに、カップルは多い。これが行かない理由ではない。もちろんそうである。


(インスタ映えにはなるからな。写真を撮るために行くかもしれない)


なにしろ気まぐれ旅ではあるので、行くかどうかはその時の気分次第。放浪しているのだ。

さて、そんなことを考えながら横断歩道を左に曲がって直進している。車通りは今まで見てきた中でも多い。それだけここは栄えているということが伺えるが、景色は歩いていても全然変わらない。南禅寺へ行くには途中で右折しなければならない。代わり映えの無い景色で右折する場所がわからなくなるのではと思うが安心してほしい。小さな橋が見えたら曲がればいい。


(看板出てきたな)


南禅寺ほど有名であればしっかりと看板はあるので橋を目印にしなくとも到着するだろう。看板の指示通り俺は橋で曲がった。この道は歩きの場合南禅寺に行くための道だ。料亭、カフェ、飲食店。観光客向けのものが立ち並んでいる気もするので人通りは多いのだろう。

そこをまっすぐ進むと出てくる南禅寺。近づくにつれて和の木々が右片に連立してくる。左には駐車場あり、混んでいなければ車で来ても待たずに駐車できるくらいの台数は確保されている。


(バスの駐車場もあるな)


ツアーに組み込まれているのだろう。バス用の駐車場も設置されている。整備されすぎて面白い情報が無い。悪口を言うつもりはないが、よくあるのが有名であればあるほど整備された自然が増えてしまうのだ。だとしても確かに美しい。それは認めるのだが、独特な個性が欠如してしまう。


(内部は完全に自然なのだが)


いじられていない自然が特に美しいと思うのは俺だけだろうか。いじられていない自然は見るものを惹きつけるが、私達に苦難を与える。駐車場は良い例だろう。木々が生い茂ったところに駐車場を作ったら車としては駐車しにくい。そして車は傷つく。それを防止するには、景観を崩さないように緻密に計算して自然を残した状態で駐車場を作る。それが観光における保全との両立で最善の方法なのはわかる。俺はただその苦難が好きなだけなので、俺がただの変態だということでこの話は終えとこう。


(ま、美しいことには変わりはない。俺がとやかく言う事ではないよな)


「大本山南禅寺」


俺はこの言葉が掛けられている木の門をくぐって足を踏み入れた。南禅寺に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る