謝罪
「あなたのお父さん。伊織は、我が家……実佳家の墓に眠っています。きちんと、弔っています」
理事長が、悲しそうな顔で詩織に応えた。
詩織は、少しだけ驚いたように目を見開いた。
「本当ですか?」
「本当です。あなたとあなたのお母さまを巻き込まないためにと、私は詳しい話をしなかった。それが返って、あなた方に辛い想いをさせてしまったのかもしれませんね」
理事長は、暖炉の前に歩いて行って、詩織のすぐ目の前に立った。
「お話します。全て」
かさねは、何となくここにいていいのか、いたたまれない気持ちになった。
「あの、私、ここにいてもいいんですか?」
かさねがおずおずと聞くと、詩織がこくりと頷いた。
「いて。かさね。証人になって。私の父親が、この世に存在した人間だって」
「え?」
「かさねさん、あなた方生徒が昨日見た恐ろしい光景についても、今、真相をお話しします」
理事長は、泣き出しそうな顔で、かさねにそう言った。
もうずっと混乱しっぱなしのかさねを、落ち着き払った目でまっすぐに見つめた詩織が、無言で頷いた。
黙って聞け、ということだと、かさねは受け取った。
無言でうつむくことしかできない。
「まずは、何から話しましょうか。長い昔話になってしまうかもしれませんが、どうか、聞いてください」
目を閉じて、理事長は語り始めた。
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