戦争について②
『銀色の魔女見習い』
Chapter-6 PLATA
6-3 戦争と宗教と魔女
より一部引用。
――
「『戦争が悪』で、『するべきじゃない』なら。止めたら良いじゃない。どうして人類史始まってから今まで500万年、一度も止めてないの?」
「……えっ」
「生き物ってさ、生きる為に活動してるのよ。死にたくないから、色んなことをするの。『死ぬくらいなら殺す』のが生き物よ。利益が出るんだから、戦争を止めるなんてできやしないわ」
「…………よく、分からない」
ユインは、当然のことを話すように、つまらなさそうに。説明してくれた。
「あんた今から餓死するわ。ギンナ」
「えっ」
「もう1分後に死ぬ。けど隣の奴がパンを持ってる。どうする?」
「……分けてもらえるように頼む?」
「言葉は通じないわ」
「…………身振りで」
「してる間に死ぬわ」
「……なら、仕方ないけど強引に食べさせてもらってから、後で説明してお礼を」
「『それ』が戦争よ」
「!」
はっとした。
ユインの目を見たけど。まだ、つまらなさそうな顔。
「平和だから人口が増えて、自国の生産だけじゃ賄えなくなった。他国との交渉は決裂した。他国も同じ状況だから。なら奪うしかないじゃない。でないと死ぬのよ。何万人も。自分の家族が。友人が。国民が」
「……でも、後で説明とお礼を」
「奪われた側は思うわ。あの国は盗賊のような犯罪国家だ。嘘付きの集団だから何も耳を貸すな。またやられる前に、今度はこっちからやらないといけない。自国民が殺される前に」
「……!」
はあ、と溜め息すら出てきた。思えばユインは、先進国……特に日本に対して、思うところがあるようだった。最初から。
「『平和』は続かないのよ。人が死なないならどんどん増える。するといずれ食べ物が足りなくなる。そんなの当たり前。地球の面積は決まってるのよ」
――平和ボケ。
私は私の国がそう言われることを知っていた。
「そんな簡単なことも理解せず。しようとせず。ただただイメージとレッテルだけで『戦争』の言葉だけを忌避して、盲目的に平和を信奉するのが先進国民。『平和』が基本だと思ってる。違うわよ。『戦争』が基本。その間に、僅かな期間に、極上の贅沢である『平和』があるの。個人の人生とかは置いておいて、この場合『人類』全体の話ね。人間ってのは、戦争する生き物なの。好む好まざるは別として戦争を『しなければならない』生き物なの」
「…………!」
――
現時点でまだ投稿されていないエピソードかもしれませんが、ギンナとユインの会話ですね。私と同じような『空気』で育ってきたギンナに対して、とても厳しい意見のユイン。
人は、本来争うものだと思っています。基本的に戦闘種族。
勿論違う意見もあるでしょう。しかし、意地悪な物言いではありますが、私の意見に反論した時点で『争い』が発生していますので、やはり『そうだ』と言わざるを得ません。
こんなこと、自分と家族が戦争に関わっていないから言えることだと思います。よく言われる悲惨さを思い知ったら、こんなこと言えないのかもしれません。当事者に対して、言えることではありません。もし、私がそんな場面に出会したら。泣いて逃げ出すと思います。私は弱いですからね。
しかし。
そんな、『現地』で起こっている『悲惨』と同時に。
『各国首脳』同士の『脳内』で起こっている『空中戦』が。
後の世……客観的に見た時に。『そちら』の方が、『戦争の本質』……『歴史』として語られるのです。
どこの国が、どんな事情で開戦して。負けた、勝った。結果、どうなった。
戦地に赴かない『指揮官』視点で、教科書は語ります。地図を上から見下ろして、陣地がどうなったかを俯瞰して。
記載される名前は指揮官の名前。国のリーダーの名前。
動員された総数と、死者が『数字のみ』記載されて。
幾多の命、数多の悲しみは『無かったかのように無視される』。
私のような勘違いが起きてもしかたないのかもしれません。
喉元過ぎれば熱さを忘れる。日本の敗戦から77年目。太平洋戦争の当事者は、もう殆ど生きていません。徐々に、冷静に、客観的に語られることでしょう。数字と指導者と国境を用いて。
『遥かなるマインド・ウォー』
『BLACK OUT ~ 角折れた竜王と最弱種族の男』
『ネフィリム・エスカトロジー』
『GLACIER(グレイシア)』
どれも、戦争を主なるテーマにした作品です。
『お墓参り』のシーンを、必ず入れるようにしています。
彩が、ハルカが、敵地と知っても。憎きひかりと出会しても兄に参ったように。
ラスが毎回、祈るように。レイジが、誰も知らずに亡くなったアンガーを思うように。
文月達が、今度は家族皆でと誓ったように。
エヴァルタが、いつまでもフロウを忘れないように。
私は戦争の世代ではありませんが。
戦争を経験した世代『から直接伝え聞いた世代』として。
今後も戦争・闘争をテーマに執筆していきます。
戦争という行為の、『善悪では語れなさ』『悲惨さ』『互いの正当性の主張』を。
『ヒーロー』『悪役』というテンプレートには当てはめることなく。思考停止になることなく。
それらを読者が考えながら、物語として楽しめるよう、エンタメにして。
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