社会について①

例え話をします。


ここは原始時代のサバンナ。

人間がひとり居ました。Aとしましょう。


Aは成人男性で、ひとりで暮らしています。

じっとしていると、お腹が空いて死んでしまいます。

Aは死にたくないので、食糧を得ようとします。

人間特有の頭脳によって罠や武器を作り、原始時代特有のパワフルな肉体を使って他の野生動物達を狩り、それを食して生活しています。

食糧の保存方法は無いので、狩るのは常にその日の内に食べる分のみ。しかしそれでも、運が悪いと何も食べられない日があったりもしました。


ある日。別の人間と出会います。成人女性でした。Bとしましょう。

Bは平均的な体格の女性だったので、Aのようにパワフルに武器を振り回して獲物を捕えることはできず、張った罠に収獲が無ければ食べられないので、山菜などを採って料理をする手段を身に着けていました。これにより、肉を狩れなくとも飢えることはありません。


出会ったAとB。ふたりは自然と惹かれ合い、恋人になりました。

Aは大好きな恋人に美味しい肉を食べてもらいたいので一層張り切って狩りに行き、Bは大好きな恋人の知らない美味しい山菜を食べてもらいたいので一層張り切って摘みに行きます。


そんな幸せな生活を送るふたりの間に。やがて子ができます。


身重となったBは、徐々に外へは出歩けなくなります。そこでAは、狩猟と山菜摘みの両方を行うようになります。ふたり分の食糧を確保しなくてはならないので大変です。BもAが大変なのは心苦しいので何か手伝いたいのですが、AとしてはBには無茶をして欲しくありません。


子が産まれるまで、十月十日とつきとおか。なんとかふんばって、AはBを守り切りました。


しかし、大変なのはここから。生まれた子Cは、目を離して良いものではなく、常に大人が面倒を見なくてはいけません。さらに、乳児の間は母親からの授乳が必要です。Bはまたもや、外へ出ての山菜摘みが満足にできません。

そしてAは。同種族の仲間、特別な仲間である家族に対して特別な感情持つのが生物というもの。愛する家族の為に、今度は3人分の食糧を獲ってこなくてはなりません。

が、ふんばり時。がむしゃらに罠を張り、武器を振り回し、山菜を摘みまくります。


原始時代特有のパワフルなAでしたが、ひとりで暮らしていた時と比べて3倍の食糧確保にはとても疲れます。


そんな、ある日。Aは自分と同じようにがむしゃらに頑張るもうひとりの成人男性Xと出会います。

Xも、妻と子がおり、毎日がむしゃらなのだと。


そこでふたりは思い付きました。

「協力しないか?」と。


ひとりで3人分を用意するのと、ふたりで6人分を用意するのでは、負担や疲労、効率はどうなるでしょう。


飛躍的に改善されます。

罠は倍仕掛けられ、どちらかの罠が不発だったとしてももう一方に掛かっていれば『その日の肉は無し』という最悪の状況は免れます。

武器を用いての狩猟は、ひとりで追い掛けるよりもふたりなら『挟み撃ち』という戦法が取れます。これなら体力の消費を抑えながらひとりの時より何倍も狩れます。


改善されるのは男性だけではありません。

ふたりの母親が子供達を『交替』で見れるようになり、その間片方は山菜積みにも行ければ、休むこともできます。負担の軽減という点では凄まじい成果が見込めます。


かくして。A一家とX一家は他の追随を許さないレベルで快適、かつ安全で裕福な生活システムを構築することに成功します。


これが、『群れ』の原初。


すると、他の家庭もA達に持ち掛けてきます。

『俺達も入れてくれ』と。そりゃ勿論、それぞれ男手ひとつなので大変です。

Aは当然、受け入れます。多ければ多いほど、効率が上がるからです。


家を一箇所に集めて、他の動物達に襲われないようにその周りを柵で囲んで。


これを『村』と呼ぶようになりました。

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