第162話 次の目的
ラピスとともにアシッドドラゴンを倒した日から数日の時が流れた。その日からラピスの中で何かが変わったらしく、近頃はギルドに毎日のように行って依頼をこなしているようだ。それに伴って近頃はアルマ様とカナンのお目付け役が俺からすっかり彼女に移り変わってしまった。まぁそれはジャック自身も納得していることだから、俺から何かを言うつもりはないし、個人的には助かっている。
ラピスがいろいろな役割を請け負ってくれているおかげで俺は自分の仕事に専念できるようになったし、ある程度金銭面でも楽になった。
そんな日々を送っていた最中、俺はふとあることが気になり、ジャックのもとを訪れる。
「ジャックさん、少し聞きたいことがあって……少しお時間良いですか?」
「もちろん構いませんよ。」
そしてジャックの部屋へとお邪魔すると、彼は紅茶を淹れてくれた。
「さて、今度はいかがいたしましたかな?」
「ちょっと次にアルマ様が欲する食材が気になって。」
「なるほど、そういうことでしたか。それでしたらこちらを……。」
そう言って彼は俺に以前見せてくれた魔王となったものが欲する食材の詳細がまとめられた手記を手渡してくれた。
パラパラとページをめくり、サンサンフルーツの次に書いてあるものに目を通すと、そこにはある生き物の名前が書いてあった。
「
聞いたことのない名前の生き物だな。ウオって語尾についているから魚関係の何かしらなんだろうが……。
「ダイミョウウオは次のページにある通り、魚体の両脇に凶悪な刃のようなヒレをもった魚の魔物です。」
ジャックの説明にある通り、次のページには厳つい魚の絵が描いてあり、両ヒレが巨大な太刀のようなもののようになっている魔物の姿が描かれていた。
「こいつは……海にいる魔物ですよね?」
「その通りです。」
海にいる魔物ってことは、釣り上げるか……もしくは海に潜って倒しに行かないといけないってことか。地上で戦うならまだしも、海中で戦うってことになるとかなり動きも制限されるしめんどくさそうだな。
「ちなみにこいつは、釣り上げたりとかって?」
「無理ですな。この両ビレはとんでもない切れ味を誇っておりまして、釣り糸ぐらいならすっぱりと切ってしまうのです。」
「となると……。」
「えぇ、海に入って海中で戦うしかないのです。」
「うわぁ……。」
なんて面倒な相手なんだ。海中で戦うなんてとんでもないハンディキャップを抱えることになるぞ。
「まぁ間違いなく、ここに記載されている食材の中でも屈指の難易度を誇る魔物ですな。陸上で戦えばまず負けることは無い魔物ですが、水中となると話は違いますから。」
「こっちは動きが制限されて、水中に入れる時間も限られてる……でもあっちは水中でこそ真の力を発揮できる。完全にあっちの土俵で戦わないといけないってことですもんね。」
歴代魔王の進化に必要な食材をとってきた人たちに討伐の仕方を教えてもらいたいぐらいだ。
「なんとか陸上に釣りあげられれば……勝機はありそうだな。」
「ちなみに一番簡単な方法はダイミョウウオが住んでいる場所を特定して、一部分だけ海を蒸発させるというやり方が最も簡単らしいですぞ?」
「そんな魔法俺は使えないですよ。」
「まぁカーラ様たちのような魔女クラスに魔法を扱えるようにならねば無理でしょうな。」
「う~ん、いろいろ自分でも考えてみます。」
「ギルドに詳細な生体記録などが記された書物があるはずなので、そちらを見てみるのもよろしいかと。」
「アドバイスありがとうございます。」
じゃあ今日の夜にでもギルドに顔を出してみるか。
そんな風に思っていると、ジャックがもう一つアドバイスをくれた。
「もし……有効な対策が思いつかないようであれば、ダンジョンに赴いて有効なアーティファクトを探すのも一つの手かと。」
「アーティファクトですか。」
「聞いた話によると、水中でも陸上のように動けるようになるアーティファクトもあるとか。」
そういう話ならナインやスリーの方が詳しいか。アーティファクトの生みの親であるミラ博士という人物から作られているのが彼女たちだし……ひとまず一回彼女たちに聞いてみようか。
「ありがとうございました。おかげで俺が次に何をしないといけないのか見出せました。」
「それは何よりです。」
まずやることはあの二人にアーティファクトのことについて聞くことだ。もしそれで有用なアーティファクトが無いようなら……水中でも動けるように訓練を積むしかない。
ジャックにお礼を告げた俺は、ナインとスリーを探すために彼の部屋を後にするのだった。
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