第155話 最強が故に……


「よーし!!いっくぞ~!!」


 ギルドで依頼を受けてきた俺たちは、城下町の近くにある黒の森へと来ていた。今回受けた依頼は初級編であるレッドキャップの討伐。以前俺が壊滅させたレッドキャップの集落に住んでいたやつらのはぐれ物の討伐だ。

 正直なところ、あんな奴らがアルマ様とカナンに勝てるとは思えない。何なら指先で小突いただけで倒せそうだ。


「確かレッドキャップの討伐だったよねカナン?」


「うん、アルマちゃん。」


「よゆ~だね!!」


「でも一応気を付けようねアルマちゃん。」


「わかってる~。」


 そして意気揚々と話しながら進む二人の後ろに着いて行くように歩いていたところ、ふとアルマ様が歩みを止めた。


「あはっ♪見つけた……。」


「うん、あそこにいるね。アルマちゃんどっち倒す?」


「じゃあアルマは右の方倒すね。」


「じゃあボクは左ね。」


 俺ですらも見えていないレッドキャップをすでに二人は認識しているらしい。


「行くよ~レヴァ!!」


 アルマ様が右手を横に伸ばすと深紅色の刀身の剣が現れる。あれがアルマ様の武器らしいが、この目で見るのは初めてだな。

 そして深紅色の剣を握ったアルマ様は一直線に走り出す。


 カナンの武器は何なのだろうかとふとカナンに目を向けてみると、彼女はどこから取り出したのかダイスのような物を振っていた。そしてダイスで出た目を見るとカナンはポツリと呟いた。


「1番……。」


 そう彼女が呟くと、彼女の両手に白く輝く短剣が握られていた。


 あれが彼女の武器なのか?それにしてもさっきのダイスのようなものはいったい……。


 そう疑問に思っていると、まるで閃光のようにカナンは走り出しアルマ様の後ろに一瞬で追いついた。そして二人は左右に分けれた次の瞬間、赤い光と白い光が暗い森の中で一瞬強く光り輝く。


「うぉっ!?」


 光が輝いた瞬間、ものすごい衝撃波が一帯に広がる。あたりの木々は激しく揺れ、俺も吹き飛ばされそうになりながらも踏ん張っていると、二人が少ししゅんとしながらこちらに戻ってきた。


「カオル~……ごめん、失敗しちゃった。」


「え?」


 戻ってきたアルマ様は少し落ち込みながらそう言った。あの攻撃なら確実に仕留められたと思うけど……失敗したってのはいったい?

 疑問に思っていると、カナンが事の詳細を教えてくれた。


「あ、あの……アルマちゃんとボクの攻撃で確かにレッドキャップは倒したんですけど、ちょっと張り切りすぎて跡形もなく……。」


「ごめんねカオル。」


「あぁ~……なるほど。」


 つまるところ、二人の攻撃の威力が高すぎて攻撃したレッドキャップが跡形もなく消し飛んでしまったと……。


 一応二人はギルドで魔物ハンターの依頼の達成条件などなどについてリルから直々に講習があったから、倒した魔物の一部、もしくは本体を持ち帰らないといけないということは知っている。そしてそれを持ち帰ることができなければ、依頼達成と認められないということも二人はつい先ほど教えてもらったのだ。


 少し落ち込んでいる二人に俺は声をかける。


「大丈夫ですよ。レッドキャップはまだいるはずなので、それを見つけて……なるだけ手加減して倒しましょう。」


「うん。今度は気を付けるね。」


「ちょっとでも原型を残さないとねアルマちゃん。」


「ちゃんと手加減しないと……レヴァは使わないほうがよさそう。」


 そしてアルマ様は武器をどこかへとしまう。


「カナンも武器使わないほうが良いんじゃない?」


「そうかも。」


 すると今度はカナンの手に握られていた短剣が突然ダイスの形に変貌し、彼女はそれをポケットにしまった。


「よ~し、次のを探そうカナン!!」


「うんアルマちゃん!!」


「二人とも張り切るのはいいですけど気を付けてくださいね。」


「わかってる~!!」


 まぁこの森にいる魔物が二人に傷をつけられるとは思えない。それに二人は魔物を感知するスキルみたいなのを持ってるみたいだし……俺の時みたいに奇襲に気が付かないということはないだろう。


 そして二人の後を追っていると、二人が先ほどレッドキャップを倒した場所に赤いボロボロの帽子が二つ落っこちていた。


「ん?これは……。」


 それを拾い上げてみると、どうやらレッドキャップたちが身につけている帽子のようだった。これを持ち帰るだけでも依頼達成になるはずだから、一応もし……時間内にレッドキャップが見つからなかったら、これを討伐の証としてギルドに提出しよう。


 俺はレッドキャップの帽子を収納袋にしまうと、アルマ様たちの後を追った。


 その後森の中を探索し続けたが、レッドキャップどころか魔物の影すら二人は見つけられず、完全に落ち込んだ二人とともに俺はギルドへと戻るのだった。

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