皇城のアーティスト(84話 割愛エピソード)

※本編「 84.彼を目覚めさせる晩餐会」の画家さんからエミリアが皇女様の絵を受け取りに行く場面に入れたかったけど、本筋に関係ないので割愛したエピソード。


こちらで出てくる方は登場時(本編「22.再び鏡の前へ」)から設定は考えていましたが、やっぱり盛り込むと冗長になりすぎてしまうと、詳しく語れる機会に恵まれていませんでした^^;


アルフリードの回想では少し触れられましたが、今後も本編の方では入れる見通しが立ってないので、短いしオチも無いんですが、こちらに置いておこうと思います。


******


「あなた、まだ時間ある? よかったら友人に送る絵を描いてるから、見ていって」


前回、画家さんは身分に関わらず順番の割り込みを許さない人だと、助手さんが言っていたので厳しい感じの人なのかと思っていたけど、なかなか気さくな方みたいだ。


私はお言葉に甘えて、その絵を見せてもらうことになった。


この間、白騎士トリオがモデルになって描いてもらっていたお部屋に通されると、そこにはラドルフ一家の肖像画と同じくらいの2m級のキャンパスに、途中まで描かれている皇女様の絵が置いてあった!


やはり、パーティーの時のご衣装で、輝くティアラを頭に乗せて、皇女様らしい自信に満ちている微笑みを浮かべている。


「あ、あの、この大きくて立派な皇女様像は一体どなたにお渡しするんですか……?」


私が驚きを隠せずに聞いてみると、


「皇城にいらっしゃるアーティストよ。今度、個展も開くみたいよ」


画家さんは謎の言葉を残して、絵の具にまみれたコップや筆なんかが山ほど置いてある机の上から1枚の紙を取り出して渡してきた。


皇城にいるアーティスト? 私も足しげく通っていた皇城にそんな人、いたっけかな?


渡されたパンフレットには、不思議な形をした置物やアクセサリーらしき絵が描かれていて、そこには私だったり、帝国の人間なら誰もが知ってる人物の名前が書かれていた。


“その魂の叫びを聞け! ナターシャ・バランティア 5年ぶりとなる粘土展ついに開催”


これまで、影も薄くって、お名前も明かされていなかったけど、この方は皇女様のお母様……つまり、帝国の皇后様だった。

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