■自由部始動番外編~部活動紹介編~part2※〈萌葱林林視点〉
--------------
<部活動紹介、当日>
-体育館-
ワイワイ ガヤガヤ
「何か人多いねー、ほとんど一年だけだと思ったけど二、三年の帰宅部の人もいるんだ」
「全校集会だからね、一応全員集まるんじゃないかな?」
「あ、そっか。あ! 始まるよ」
壇上には生徒会と思われる生徒の進行により、校長先生の挨拶から、と校長先生が舞台袖から現れた。
「えー、皆さんこにゃにゃちわ。」
ヤクザのような風貌のサングラスオールバック髭面男がいきなり剽軽な挨拶をした。
え?あの人が校長先生!?
初めて見た! 怖い!
私はいきなり気絶しそうになったが何とかこらえた。
「本日は部活動紹介におめおめと集まって感謝する、それでは皆さんにはこれから殺し合いをしてもらいます」
ざわ……ざわ……
いきなりデスゲームの宣告をする校長先生。
教頭先生と生徒会らしき人が慌てて壇上に上がり止めに入る。
ガミガミ
「えー、怒られたので普通の挨拶を。『部活動』それは一度しかない高校生活を彩るいわば青春の形そのもの。学生の本分は勉強よりもむしろ輪……縁を作る事だと私は思っています。部活動はきっとそのきっかけ、手助けをしてくれる。居場所を作ってくれる場所。もちろん本人の努力も必要ですが、先輩方が優しくフォローしてくれます。難しい事は考えず輪の中に入る一歩を踏み出してみてください。予想以上のものをあなた達は手に入れられる筈です、以上」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
一斉に拍手が起こる。
校長先生の話にしては短いけど、私にとっては凄くいい話だったな。
さっきのはきっと軽いジョークみたいなものだったんだよね。
よかった。
縁を作る事が学生の本分。
それは勉強よりも大事だと校長先生は言っていた。
まだ高校に入ったばかりの私にはわからないけど、それはきっとその通りなんだろう。
私は横目で里奈ちゃんを見る。
「ん? どしたの?」
「ううん、何でもない」
里奈ちゃんがいなければ私はきっと中学生活すらまともに送れなかっただろう。
改めて心から里奈ちゃんに感謝した。
~~~~~~~
『……続きまして、歴史研究部のご紹介です……』
「どう? 林林。入ってみたい部活あった?」
「う~ん、皆良い人そうだし良さそうな部活ばっかりだね」
まぁ集会だし、それは当然なんだろうけど。
でも私がやりたい事って何なんだろう。
今まで見てきたけどどれもピンと来ていなかった。
まだそんな段階にいるのって怒られちゃいそうだけど。
私にはこれといって得意な事も不得意な事もなかった。
強いて言えば運動系はちょっと苦手だけど、それでも学生の平均値くらいはあると思う。
(私がやりたい事は何なんだろう)
こう言っては何だけど、対人を克服すると同時にどうせなら打ち込める事に熱中したい。
折角部活に入るんだしね。
それに今まで見てきた部活は皆優しそうだし楽しそうなんだけど、どこか調和的というか何というか……それはとても良い事なんだけど。
(新しく入った場所でも気を使わせたりしちゃいそう…)
それでは何も変わらない。
むしろ里奈ちゃんの懸念材料を増やす結果になりかねない。
それだけは避けたかった。
(私自身、一皮剥けなきゃいけないのかな)
何か私の閉じこもっている殻をこじ開けてくれる。
勿論、自分で開けなきゃいけないんだけど……そんな場所はあるのだろうか。
「ありがとうございました、……えー、では続きもがっ!?」
キーンッ……
「えっ!?」
私は突然の事に驚く。
私だけではなく、会場全体がざわざわとしていた。
突然、女忍者みたいな人が上から降ってきて生徒会の進行役の人を紐で縛りつけ忍者さんがマイクを持ち進行役に成り変わったのだ。
何かのパフォーマンスだろうか?
「はい、では続きましてわたくしの可愛い可愛い雨の所属する『自由部』のご紹介です」
そう言って女忍者さんは次々と先生や生徒会を縛りつける。
バチッ!
「貴方……やるわね」
「おでん始めましたー!」
一人だけ難を逃れたと思われるコンビニの店員の格好をした先生らしき人と女忍者さんが対峙する。
コンビニ定員の格好をした先生って何だろう。
(一体……何が始まるのっ!?)
その時照明が落ち、体育館は少し薄暗い闇に包まれる。
「何かやばそうっ! 林林っ、逃げるよ」
「う、うん」
スタスタスタ……
動き出そうとしたその時、一人の男子生徒が舞台袖から歩いてきた。
凄く顔立ちの整った……まるで恋愛漫画の主人公みたいな人。
同じ一年で有名な人だから私でも知っている。
女子生徒がこの学年で一番のイケメンと騒いでいる確か響木くんとか言う人。
「えー…会場の皆様騒がせてしまいすみません。今の方は自由部部員ではないので悪しからず」
どうやら今のは自由部のパフォーマンスではなく、一人の生徒の暴走だったようだ。
「私達自由部はつい最近部活動になったばかりです、それまでは名前もないただの同好会でした」
里奈ちゃんから聞いて知っていたけど、本当に響木くんも入ったんだ。
「部長は『リア充』になる事を目標にこの会を創立しました。部活の行動理念は【自由に生きる事】。やりたい事やりたくない事やらなければいけない事、それらをやるのもやらないのもうちの部は自由です、皆、好きなように生きています。内に秘められた欲望、渦巻く不満、叫びたい衝動、何をぶちまけてもぶちまなくても自由です、私達はそれを全て受け入れます。ですから、皆様ーーーー俺を助けてください。では『自由部』によるパフォーマンスをご覧下さい」
何か響くんから悲壮なる心の叫びが聞こえた気がした。
そして、自由部が皆の前に姿を現す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます