異動先はロジスティクス (鏡開きなど)

@J2130

第1話 鏡開き

 昼の休憩時間の前、食堂でいい匂がしている。

 

 ベビー用品メーカーの僕がシステム室から茨城県の物流倉庫へ異動してから初めての正月、8日のこと。


 食堂に行くとパーツセンターの吉村さん、物流事務の大山さんと山口さんがコンロで“お餅”を焼いていた。

 手際よく作業をしている。

 あんこもある、きなこもある、醤油もあった。

「堀さん初めてだっけ…?」

 そうだ、去年の1月の半ばに異動になったのでね、鏡開きははじめてだ。

「いっぱい食べていってね…」


 ここではよく言われる。

「いっぱい食べてね、いっぱい持って帰ってね」

 また言われたね。

 インゲンの苗もタケノコもふきもそんなことを言われて、いっぱい持って帰った。


「はい! いっぱい食べます!」

 お昼が楽しみだ。


「毎年やっているんですか…?」

 昼の時間、美味しそうな醤油餅をじっと見つめて僕は言った。

 吉村さん、箸でつまんで僕にそれを渡しながら応えてくれた。

「昔はもっとバーベキューとかイベントやったんだよね、でもいいでしょ、こうゆうの…」

 頂きます。

 お餅、おいしいな。


「はい! 筑波っていいですね~」

 いいですね、ここは。


「堀さん、これあとで絶対に食べてね」

 緑の餡のお餅もある。

「なんですか?」

 みなさん笑顔になった。

「宮城が有名だけどね、ここでも食べるんだ、『ずんだ餅』。おいしいよ」

「そうなんですか?」

「絶対食べてね」


 おいしかったです、ずんだ餅。

 会社でお餅を焼いてみんなで食べる。

 ここは、物流現場はいいところです。


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