第118話 学園祭⑦
有希と別れた後、真由ちゃんの希望でお化け屋敷に行く事になった。
お化け屋敷は別棟3階にある視聴覚室で、通常の教室の2倍程の大きさである。
つまり通常の2倍、お化け屋敷を堪能出来るという事だ。
楽しめる人ならな…。
俺は怖いのは好きでは無い。
心霊体験だって、好きでしているワケでは無い。
お化け屋敷に着いた、混雑状況はほぼ無い。
入口の扉は全開になっているが、中は布で見えない様になっている。
そして時折、
「キャー、キャー!」
とか、
「ギャーッ!!」
とか叫び声が聞こえる、心臓に悪い。
出口からも若いカップルが、
「ギャーッ!」
と言いながら飛び出して来た。
そんなに怖いのかな…
俺達は入口で代金を支払い、順番を待った。
それ程待たずに係員である生徒から電池式のランタンを1つ渡され、入る様に促されたので中に入る…入りたくねー!
真由ちゃんは、
「真之さんは、お化け屋敷大丈夫な人?
楽しみですね!」
とウキウキしている様だ、楽しそうで何よりだよ!
入ると中は肌寒い、エアコンが効いているのか?
そして暗いし、通路は細い。
俺はランタンを前に突き出して、ゆっくり歩く。
壁には赤い手形が付いていたり、実際にあった猟奇事件の新聞記事に血糊が付いていたり、お札が貼られていたり、人の顔に見えるシミがある。
次にトンネルの様な場所がある、ここも通らねば先へは行けないから仕方ない…
俺が先頭で歩き出すと、冷たっ!
霧吹きか?ビビらすなよ…って、お化け屋敷だから当たり前か。
「キャッ!」
と軽く悲鳴を上げた真由ちゃんが俺の服の背中部分を掴んで来る。
ゆっくり進むと地面が!
バリバリと音を立てた。
…音を出す何かを踏んだ様だ、色々と拘ってるな…怖い。
なんて思ってたら、バリッ!と壁から手が複数出て来た!
「うおっ!」
「キャーッ!」
真由ちゃんは俺の背中にしがみ付く。
なんか色々当たってるけど、俺も怖いから気にしていられない!
次は小部屋に出た。
部屋の隅にはテレビがあり、砂嵐の画像が流れている。
暫くすると画像は切り替わり、コチラを寂しそうに見ている女の幽霊が映り込む。
そしてまた砂嵐の画像になる。
俺は他に視線を感じて部屋の中を見回すと、壁の隙間から、ジッ…と人が覗いていた!怖っ!
「キャー!」
真由ちゃんも壁の中の視線に気付いた様で、悲鳴を上げた。
俺の背中にすんごい密着してる…。
まさか壁を突き破っては出て来ないだろう…でもずっとコッチを見ている、早く次に進もう…と思ったら、壁が突然、バカッ!という音と共に開き、テレビ画面に映っていた女の幽霊が襲い掛かって来た!
俺達はヒーヒー言いながら急いで通路を先に進む。
狭い通路を進むと、また小部屋に出た。
今度はテーブルの上に血の涙を流したフランス人形が複数置いてある。
耳を澄ますとオルゴールの音と、子供の笑い声が聴こえる…
そしてテーブルの横の床にはダンボールが置かれていた。
どう見ても人間が入れる大きさでは無いが、腕が…生々しい血だらけの人間の腕が1本ダンボールから飛び出ている。
生々しい腕だな、本物みたいだ…と見ていたら、突然腕が跳ねて飛んで来そうな勢いでブルンブルンと動き出した!
すんげービックリした!
もう怖すぎて声も出ねーよ…
「キャーッ、キャーッ!」
真由ちゃんもキャー以外言わなくなったな…密着度もハンパない。
通路を先に進むとまたまた小部屋に出た。
今度は部屋の隅に大きめのロッカーが1つ置いてある。
開き戸は半開きになっており、中には人体模型が置いてある。
通り過ぎようとしたら、人体模型が突然スッ飛んで来た!
「うおっ!!」
「キャーッ、キャーッ!!」
当たりはしなかったが、ビビった。
これで終わりか…とロッカー内を見ると、もう一体人体模型が立っている…
これ人形じゃねーな…コチラをジッ…と見ている…
目は合っているのだが、襲い掛かって来る様子は無い。
ならば、と立ち去ろうとロッカーに背を向けた途端、バカーン!と音を立てて開き戸を派手に開けながら、背後から人体模型が追い掛けて来た!
「あ"あ"あ"ーーーっ…!」
「うおーーーっ!!!」
「キャーーーッ!!!」
三者三様に声を上げ、通路を走ると出口に出た。
身体が重い…気付くと真由ちゃんは俺の一部になってるんじゃないかってくらいにしがみついている。
「真之さんーっ…うーっ…」
とか言ってる顔が半泣きだよ、相当怖かったんだろうな。
学園祭のお化け屋敷舐めてた、怖かった。
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