デスゲームX日目
空白メア
#1 N県デスゲーム事件
N県デスゲーム事件
『N県H市の山奥で全国で行方不明になっていた。学生二十五人が発見されました。そのうち二十人は死亡五人は無事保護されました。彼らは……』
俺が追ってるのは四年前の全国高校生二十五人監禁殺人事件だ。この事件は監禁された子達で殺し合うゲーム通称デスゲームが行なわれていた。それは生き残った五人が全員一致の証言をしたので確かだと言われた。この狂った事件はN県デスゲーム事件としてネットで未だに話し合われている。俺はこの事件を知っている。実は生き残りの五人のうちの一人である
その日は生き残った仲間である
「ありがとうね四人とも。」
俺達はあのデスゲーム会場である山奥の館から出て下山をした。そして、その後保護されたあと事情聴取を散々された。そして、その後は心のケアのため入院をしてカウンセリングを受けた。結葉は俺らの中で一番最後に出てきた。これで無事皆退院だった。
「みんな学校行ってるの?」
「ああ、留年したけど俺は行ってるよ。今年受験生」
俺らは当時全員高校二年生だった。俺は事件のせいで入院やら警察やら色々あって学校にしばらく通えず留年した。そして、今年遅れて受験生になった。
「俺もそう。」
横に座るイケメンがそう言ってコーヒーを飲む。彼は
「僕は辞めちゃったよ。その代わり大検とって今は大学生」
と海吏と反対横に座る
「マジで?私も辞めちゃったんだよね〜。」
と、真向かいの
「一時期は通学してたんだけどなんか違うなと思って辞めちゃったんだよね。友達もよそよそしくなっちゃったし。まぁ、その代わり通信高校に転校して元気にやってるよ」
と笑顔で語る。
「みんな元気そうでよかった。ごめんね心配かけて。」
伊坂の横の久野にまた会話の主権が戻る。正直本当に元気になったのか心配だ。彼女は一番最前線で戦ってくれていた子で外に出た途端に糸が切れたように泣いて倒れた。その後はゲーム中で亡くなった彼氏の遺言と言う名のメモを手にもってただただ泣いていた。喋らないし食事を取らない、一人で立ち上がれない。見ていて痛々しかった。
「でもこれで皆日常に戻れるんだね。」
と伊阪が笑う。みんなはそれにうんうんと頷く。
「そのことなんだけど、もう少し延長してもいい?」
と、声を上げたのは久野だった。
……は?
みんなが喋ろうとした口を結ぶ。この子は何の冗談つもりなのだろうか。病んでるからって言っていいことと悪いことがある。俺が怒ろうと声をあげようとすると
「延長って、またデスゲームでもするわけ?」
と、樹希がふざけ調子で笑う。何とか場を和ませようとしてくれているようだ。
「いや、そうじゃなくて。まだもう少し皆と関わっていたいなと思って。そうじゃないとみんなの事忘れてしまいそうなの。一祈も含めてね。」
「病院の先生も忘れなさいみたいな感じで自分もその方が幸せなのを分かっているんだけど、でもそれは違うと思った。」
そこまで聞いてさっきまで笑って対応していた達希は笑顔を失う。
「あっそ。」
そういうと彼はそっぽを向く。
「まぁ、その気持ちはわかるけど具大的にどうするの?」
達希の行動で熱が逃げた俺は冷静に質問する。
「うん。みんなのお墓参りに行こうかと思うんだ。」
「なる。でも、上は北海道下は沖縄まで揃ってるって新聞記事に書いてあったけどどうするの?全員の住所を知ってるわけじゃないし。」
と、海吏は話に食いつく。その反対に達希乗り気じゃないと言わんばかりにスマホをいじり始める。
「……それは、調べる。」
「学校はどうするの?」
と、伊坂は久野に不安そうに尋ねる。
「どうせ留年だからその間に行けるところを行く。後はちゃんと学校優先で休みの日に行くようにするよ。」
そう言いきってしまう。彼女はとても真っ直ぐな目をしていた。普通の人からしたら狂ってるようにしか見えない。いや、狂ったんだろうな。一祈が死んでから。
「僕は反対。絶対精神的にキツイよ。親と世間と俺らの目線は全部違うんだ。悲しい事件はみんなネガティブ思考で考える。そのことを忘れるなよ。お前だって天羽が死んだ時悲観的だったろ?攻撃的だったろ?それが普通の反応なんだ。家族なら尚更。それを俺らは喜んで受けに行くんだ。当事者じゃないのに何がわかるんだ。そう思うだろ?でも、それが当たり前なんだ。」
と達希は矢継ぎ早に言う。思ったことを思った順に反射的に言ってるようだ。彼らしくない。けど、全ての意見に納得してしまう自分がいた。事件は忘れたくない。けど、思い出したくもない。優柔不断ないつもの自分がいる。
「俺は賛成するよ。自分に区切りをつけたいから。」
と、海吏は手を上げる。
「私は反対。もう思い出したくないな〜」
と、伊坂は言う。いつものバカっぽい言い方をするが顔は今にも泣きそうだった。
「……篠塚君は?」
久野の言葉に皆が一斉に俺を見る。
「……俺は皆の墓参りに行きたいけど、行くなら皆で行きたい。ただ学生が数人で行くのが危ないっていうのもあるけど、やっぱり気持ちがバラバラのままあいつらに手を合わせたくない。それにみんなで行かないとメンタルやられると思う。悲しさを抱え込むには俺らは心が壊れすぎている。」
とそれっぽいことを回答するが実際中身なんてない。これも生き残る為に身に着けた話術だと思うと悲しいね。でも、道中で神経が磨り減るのは確実だ。一人で行くには思い出が重すぎる。皆の病んだ姿を見たくない。でも、数日間共にしてきた彼らの事を知りたい。そう、今までイエスかノーのイチかゼロで決めてきたんだ。今回も皆で行くか一切関わらないかの二択を皆に任せることにした。これが迷った俺の逃げ道。
「確かにそうだね。篠塚君と意見は違うんだけど、私たちが揃わないと手を合わせに行っても皆報われない気がする。」
と、俺の言葉が刺さったのか、久野はそういう。
「じゃあ、多数決か。」
「なんか久しぶりだね」
多数決なんて犯人を見つけるの時に便利だからという理由で何度も使用した。それを今度は弔うために使うのだ。
「それこそ俺らあの事件から抜けだせてないな。」
と、俺が皮肉を言うと確かになと樹希は苦笑いする。
「じゃあ、行きたい人が過半数なら皆で行くってことで。一緒に行ってくれる人手を挙げて。」
手を挙げたのは全員。それを見て俺は行くことを決めた。正直まで否定していた二人は良かったのかと聞くと伊阪は皆でならと言っていた。達希は条件があると言った。内容は久野と伊阪が高校卒業して道はどうであれ進路が確定しているというものでこれには久野以外の全員が肯定。
そして今年の春に久野は有名私立大の文学部に伊坂は美大に合格した。そして俺らは夏休みに二年ぶりに会うことになっていた。でその夏休み直前の俺らは情報収集をしていた。
俺が情報収集できたのは名前:全員。住所:五人、不確定が十人。墓の場所:全員不明、新聞記事から数人は絞り込める見込み有。って感じ。俺は時間を確認する。ため息をつき新聞のアーカイブを所定位置に戻す。そして、大学図書館んを出た。
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