「秘密の拠点があるんじゃないッスかね」……「紹介状、パッと書いておいたから」……「そうだ! 王都行こう!」

「エヴァン、あいつらそのままにしといてよかったのか?」


 バディアル連合軍に別れを告げて、俺たちは街道を歩いていた。


「そんなこと言ったって、どうしようもないよ。あっちは四十人くらいいるし、こっちは五人だよ? 捕虜にできるわけないじゃん。逆に捕虜にされちゃう」

「まあな」

「もともと僕らの任務は偵察だからね。敵を壊滅するとか捕虜にするとか任務じゃないよ。壊滅しちゃったのはあくまでも偶然だから」


 バディアル連合軍の連中にこの後どうするのか、聞いても「軍事機密だから」と教えてくれなかった。言っちゃあなんだけど、ティルト王国の真ん中でどうするんだろう。


「たぶん、どっかに秘密の拠点があるんじゃないッスかね」

サイのおっさん、ちゃんと故郷の娘さんに会えるかな」

「大丈夫でしょう。ああ見えてなかなか、したたかな方のように見えました」


 クロが言う。


「敵の心配してもしょうがない。出会う場面が違ったら戦ってたかもしれないんだぞ」

「そりゃ、そうだけど」


 ケーシーの言葉に納得しながらも少し寂しい気分になる。一人一人はいい連中なのに、国の都合でたたかわないといけない、戦争なんてつまんないもんだ。


「ジャック、ほらこれ」


 騎士様エヴァンが手紙の封筒を俺に差し出した。


「僕の愛するアリーテ姫への紹介状、パッと書いておいたから」

「紹介状?」

「もう忘れてる。『ぐあーーーーんとデカい丸いの』に乗りたいって駄々こねてたじゃないか。姫君にこれ持って行けば、たぶんなんとかしてくれるよ。僕への愛ゆえに」

「そうだ! 王都行こう! ケーシー、クロ、いいでしょ? ねえねえねえってば」

「完全にガキだな……」

「私は別にぐあーーーーんに興味ありませんが妹に一度見せてやりたいとは思っておりますしせめて私がこの目で見て土産話をしてやりたいかと」

「おっ。わかりやすく面倒くさい感じに早口になったな」

「王都リンブラはここから街道沿いに歩いて数日かな。報告もあるから、僕はポートンに戻らないといけないけど。愛する姫君に僕からの愛を伝えて欲しいんだ。まあ手紙に山ほど愛を込めておいたけど」

「うえぇ……手紙がなんか重くなった気がする……」

「カザンは俺たちと一緒に来ないか? 火Q持ちがいてくれると、イフの調子がよくて助かるんだよな」

「いいッスよ。いずれ王都には行こうと思ってたんで」


 というわけで、ポートンへ戻る騎士様エヴァンと別れ、俺たちは王都リンブラへと旅をすることになった。

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