第2楽章 Andante cantabile 表情豊かに③


デートを重ねるごとに、私は人と人とのぬくもりを味わえるようになっていった。


今まで他人に触れ合われることなんてない。

自分でも自分を撫でたりしない。だって、大人だもん。

でも、大人なのにハグしたり頭をポンポンされたり撫でられたりすることは、不思議と安心感があって、すごく嬉しかったんだよなぁ...


なんでだろう。


そのうち、コロナで人と人の触れ合いがないがために幸福感が失われているという情報もよく見かけた。

そのためにはオキシトシンを出さないといけない。これは、人と触れ合ったり、話したりするだけでも分泌される事が言われていた。そういうことなのかもなぁと思った。

私は、人と人の触れ合いを大人になってからは感じたことはなかった。でも、子供に限ったことじゃない。大人でもすごく嬉しいものなんだなと思った。


そして、気づけば2回3回と1週間ごとに会う予定を立てていた。


しかし、4回目にして年末が近づいてきた頃。


また緊急事態宣言なんかが出てきたりして、会いづらくなっていた。


何より、こうじさんは、このピンチをどう切り抜けるかに奮闘していた。


そういえば会うたびに言っていた。


「今は安定期ではなくて、いろんな変化が必要なんだ。今は別事業に力を入れようとしててみんなで頑張ってるよ。これはね、チャンスになるからね。」


コロナ禍でお客さんが減る中、そんなふうに捉える事ができるなんてなぁ...

全然考え方が違う。

すごい。


でも、仕事の話を少しされると憧れ反面、全く別世界にいるような気がした。

自分は、週に数回勤務して、家でPCに向かう日々。

正直、同じ部屋にこもって行う仕事は、環境的にも退屈で、精神的にも辛いものがあった。


そんなことを1mmも見せない彼は、なんて大人なんだろう。


だけれど、大人だからこそ無慈悲だ。現実的だ。

その後、1ヶ月に2回、1ヶ月に1回、、、と会える日が減っていった。

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