第18話 旅立ち
老騎士ガレイとパメラが最初の援軍である騎兵たちを連れてサリア村に戻ったのは、その日の夕方だった。
たった2日でクルセアと往復したんだから。2人は一睡もしていないだろう。
村の周囲に積み上げられた大量の魔族の死体に、ガレイが村の門を駆け抜けながら叫ぶ。
「エリス様! ご無事ですか?」
「とりあえず無事だから、安心しろよ」
俺の姿を見つけて、ガレイとパメラが駆け寄って来る。
「アレク殿、エリス様は?」
「だから無事だって。怪我1つしてないよ……もうサリア村にはいないけどな」
「え……今、なんと?」
「魔族はもう撃退したし。村に残っていると、王国軍に掴まって王宮に連れ戻されるかも知れないからな。だから2人には悪いけど、セリカと一緒にこのまま旅立つってさ。手紙を預かっているから、ほら」
俺は2人にエリスからの手紙を渡す。内容はこれまでのお礼と、別れも告げずに立ち去ることへのお詫びだ……いや、勝手に読んだんじゃなくて、エリスが教えてくれたんだよ。
とりあえず安心したのか、急に力が抜けたような2人を村長の家に案内して休ませる。
せっかく駆け付けてくれた騎兵たちには悪いけど。もう援軍は必要ないことを知らせるために、何人かクルセアに引き返して貰った。
まあ、全滅させた訳じゃないから。暫くはこの辺りに、部隊を待機させる必要はあるだろう。
あとは魔族軍が山岳地帯を越えられることが解ったんだから。防衛計画の見直しやら砦の建設やら戦力の配備とか、王国軍の仕事は山積みだ。
魔族の死体の処理も王国軍に任せるか。俺がやるとまた説明が面倒だからな。
ガレイとパメラには少し仮眠を取って貰ってから、魔族との戦いについて説明した。
俺が無双したことまでは言わなかったけど。あの死体の山を見れば想像がつくだろう。
総司令官のガーランドを討ち取ったことと、魔族軍のおおよその数。あとは敗走した兵士たち行方について。あくまでもサリア村で得られる情報だけを伝える。
本当は諜報部隊に監視させているから、今どこにいるかも解っているんだけど。
「おおよその状況は解りました。アレク殿、サリア村を救って頂いたこと、エリス様とセリカ殿を守ってくださったこと。そして魔族軍の撃退と……重ね重ねありがとうございます」
ガレイとパメラは深々と頭を下げる。
「いや、エリスとセリカは一緒に戦ったんだし。他のみんなだって一緒だったからな」
「ですがアレク殿に力を貸して頂かなければ、おそらく……」
まあ、ガーランドのせいだけど事実だからな。あまり否定するのも嫌味だから止めておくか。
その後は今回の活躍に対する褒賞の話が出たけど。宮廷騎士と宮廷魔術士の2人が決めることじゃないし。俺は金なんて余っているし、聖王国の地位も興味がないからな。
褒賞の話は他の仲間にも関係がある話だけど、みんなからは俺がほとんど倒したから要らないと言われた。
だから魔族軍のモンスターを倒したときのドロップアイテムと、金を分配して話がついている。
「それで、エリス様のことですが……」
2人が一番知りたいことだと解っているので。エリスたちが向かった場所以外は全部教えた。
エリスは他のメインキャラたちとガルドの5人で行動している。
ライラは2人に取り入ることが目的だったけど。一緒に行動しているうちに、仲間意識に目覚めたらしい。
ちなみにソフィアたちチョップスティックのメンバーまでいない理由は、キラーベア討伐他の報告をしにクルセアの冒険者ギルドに向かったからだ。
説明をするために誰かがサリア村に残る必要があるけど。冒険者ギルドの依頼にも期限があるからな。説明役は俺が適任だから、ギルドの方はみんなに任せた。
「そうですか……ガルド殿とレイナ殿が一緒であれば一安心です。2人も相当な達人のようですからな」
エリスの
だけど彼らの気持ちも解るから、俺は無下にしたりしない。
「ガレイとパメラも安心しろよ。これからもエリスのことは俺がフォローするからさ」
「つまりアレク殿は、エリス様の行方を知っているということですか……いや、無粋な詮索でしたな。私たちはエリス様を信じております」
「そうですね、ガレイ……でもアレク殿のせいでエリス様が悲しむなら、絶対に許しませんわ」
何故かパメラが俺を睨む……いや、意味が解らないんだけど。
「俺のせいでエリスが悲しむとか、何を言ってるんだよ?」
「はあ……ガレイ、アレク殿には全然伝わっていないようですね」
「うむ……私も朴念仁だという自覚はありますが。アレク殿も重症なようですな」
2人にジト目を向けられる。さすがはエリスの固有NPCだな。
いや、言いたいことは解るけどさ……2人の勘違いだって。
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