第220話
友好的な勧誘
フォルラーニ侯爵領、フォルラーニ侯爵の館
陛下からの話を受け、保護、もとい部下の相沢にブリウスト領でターゲットに接触してもらうべく、不敬覚悟で陛下へを陳情を行った。
これが王室が絡んでいなかったら直接アルフォートに話しを持って行く所だが今回は陛下からの発信だ。
陛下を挟まずに直接アルフォートに話を持って行ったのがバレると後々面倒な事になってしまう。
なので今回は面と向かって陳情を行った。
すると同時期にドルイット侯爵からも話が合ったらしく、すんなりと、とんとん拍子に話が進んだ。
馬でブリウスト領まで行くとどんなに急いでも2週間はかかってしまう。
それでは陛下から他の貴族へ知らせが入ってしまうので今回特例としてグリフォンを用いてブリウスト領まで言ってもらった。
「相沢、どうだった?」
「はい、確かに回復致しました」
相沢は渡り人にしては珍しい筋骨隆々の男で、快活でカラッとしているにも拘らず魔法が治癒魔法と言う男だ。本人に『なぜその魔法か』 と聞いたところ『常に戦える男でいたいが為』 と返答された。
その言葉が気に入り、本人もここの訓練が気に入り部下としてこの領にとどまっている。
だが、魔力は回復しない。 相沢もここ数年は自身の怪我よりも重傷を負った者にしか魔法を使わない様になっていた。
「本当に回復したの?」
「試してみますか?」
「腕試しか。 この私に対してか? 腕が飛ばされても良いのか?」
相沢を軽く威圧する。
この男はそれでもめげない。 それどころか不敵な笑みを見せた。
「何度でも立ち向かって見せましょう」
「よろしい……と言いたいところだけど、それはまた後でにしましょう。 相沢、それでどうやって回復したのかしら?」
「それが……分かりません」
「分からない?」
相沢は困惑したような表情をした。
「はい、まずグリフォンでブリウスト領にたどり着いたはいいのですが、応接室に通され、手を拘束されました」
「手を?」
「はい。 次に目隠しをそして口元をタオルで覆われ、最後に耳栓を付けられました」
「……それで?」
「はい、しばらくそのままの姿勢で居たら隣に人の気配を感じました。 おそらくドルイット侯爵の所の者かと思われます」
「……一緒に頼み込んでいたわね」
「しばらくして扉の方の人の気配が増えました。 そこから立たせられ、誘導され、拘束を解くと回復しておりました」
「……ならば姿は……?」
「見ておりません」
「そう」
そこまで厳重に遮断する必要があること?
まだ目隠しや手の拘束は分かる。 拉致されない為、人を覚えさせない為。 ただ耳や口も?
「物を食べたりはしていないのよね」
「はい」
「確かその渡り人は取り寄せ魔法って言ってたわ。 ただ、相沢のその報告だと飲食での回復ではないようね……」
「なにかかけられたりとかもないのよね」
「ありませんでした。 ですが、その状態で襲撃があるやも知れぬと思い武者震いしました」
「あなたも戦い大好きね」
その様子が手に取るように分かる。 きっとこの男はいい顔をしていたであろう。 逆境にこそ燃える男だ相沢と言う男は。
少し呆れを含んだため息をつき考えを切り替えた。 となると回復の鍵は歩く……?
「分かったわ、ありがとう。 褒美に後でしごいてあげるから運動場で準備してなさい」
「かしこまりました」
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