第169話


幌馬車に戻ると春子さんとオリヴィア様がいた。

オリヴィア様はすっかり馴染んでるね。


「今回決まったのは人数だ。 ベルゲマン公爵夫妻の他に男女の従者が一人づつとなった」


「アルフォート様とオリヴィア様の従者はどうなるんですか?」


「アルフォート様の従者役として俺が、オリヴィア様の侍女として桜、頼めるか?」


私がオリヴィア様の侍女……。

確かに最近髪のセットやお化粧の仕方、春子さんや灯里から学んでみんなでオリヴィア様を飾り付けるの楽しくなってるけど私一人で出来るのか……?

……いや、オリヴィア様最近自分でその辺やっちゃってるな。 アイロンの使い方教えたらメキメキ上達しちゃってるな。 むしろ私より上手くなってるよな。 ……あれ? いけちゃう?


「……試しに今日侍女させてもらってもいいですか? それで出来そうならばお受けいたします」


「大丈夫、桜さんなら問題ないわよ」


「私も一人で身の回りの事を出来るようになってきていますから、気負わなくても良いですよ」


春子さんとオリヴィア様にそう言われてだいぶ気が楽になった。


「ありがとうございます」


「で、次にベルゲマン公爵夫妻の従者について、領主の助言により王都をすでに出立したそうだ。 数日でネーアに到着予定だ。 ネーアの街からここまでの移動は相良に頼んである」


空の旅……するんだ。 

……というかそれは使うのか。


「その人たちが着き次第一緒に行って慣れさせるんですね」


「そうだ、と言っても来るのは一人、ベルゲマン公爵の従者だけだ」


従者だけ?


「奥方様の侍女は来ないんですか?」


「ああ、公爵夫妻と共に来る。 なんでも侍女は渡り人だそうだ」


「そうなんですね、渡り人……渡り人?!」


「魔力回復が本当かどうか確かめるみたいだな」


「……なるほど」


王様の周りにも居るんだね。 びっくりだ。


その日の日本旅行で行った侍女対応のテストは、オリヴィア様が自身で身の回りの世話が出来るようになったのもあって、あっさりと合格を貰った。 ……いいのかそれで。





数日たって公爵の従者が到着したと連絡を受け長谷川さんと相良さんがネーアの街に迎えに行った。

戻ってきた馬車から降りたのは、公爵の従者と領主のアルフォート様だった。


最初に馬車から降りたのがアルフォート様で、続いて降りてきた従者のかたは、髪色は白髪、お年を召した眼鏡をかけた男性だ。 背筋はシャンと伸びていて中々に貫禄がある。


「凄いな。 これは……」


馬車から降りてアルフォート様から発せらた言葉がそれである。

オリヴィア様はアルフォート様を見て、ふふと穏やかに笑ってらっしゃる。


馬車を出迎えたのは私とオリヴィア様のみ。


流石に今日は倉敷さん達は自室で魔道具作成をしてもらってる。

朝から長谷川さんに、片づけろ片づけろと急かされ片づけに追われていた。

文句を言いつつも片づけをしていたところを見ると、貴族に会うのが面倒みたいだ。 オリヴィア様は不意打ちだったため開き直ってた。 それはそれでどうなのかとも思った。


ちなみに今日からしばらくの間、倉敷さん、菅井さん、マッヘンさん、相良さんは夜別行動になる。

堅苦しくてかなわんと主に倉敷さんに言われたからだ。 


「こちらが橋沼桜です」


オリヴィア様に紹介され、教えてもらった通りにお辞儀をする。


「イーノス=フューストです。 初めまして、宜しくお願い致します」


「ご紹介賜りました、橋沼桜と申します。 こちらこそ宜しくお願い致します」


「では早速まいりましょうか」


オリヴィア様に促される形で今日の宿へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る