第137話


「そうですね。 こうしてこっちに来れるのも桜さんのお陰ですからね」


それに乗る相良さん達。 逃げ場を失ってしまった。


「分かりました。 では手短にしますね」


そう言って周りを見た。 何を言えばいいんだ? このメンツで? こういうときって何を言うんだっけ?


「では……、今後とも末永いお付き合い賜れることを願いまして……乾杯!!」


グラスどうしぶつける事無く軽く上げて乾杯をした。


慣れない挨拶に顔に熱が集まる。 照れ笑いしながらビールをグイッとあおった。


相良さんや長谷川さんも一気にグラスを空けた。 良い飲みっぷりだ。


それを見てワンテンポ遅れて領主がビールをあおった。


「……旨いな」


一口飲むと驚いたような顔をしてグラスを見る領主。


「でしょう。 俺が長年飲みたがったものですよ」


「……なるほどな」


領主と長谷川さんはどうやら軽口を言い合うくらいには付き合いが長いみたいだな。


領主の口に合ったみたいでビールのグラスは早々に空になった。


「次は何にします? 今度こそカクテ……「ビールで」」


メニュー表を見せようとしたら長谷川さんに遮られた。


「駆けつけ三杯。 それが常識だ」


「ん? そうなのか?」


凄い。 領主を騙してる。 って良いのか?


そう言ってまたみんなの分ビールを注文する長谷川さん。

私はこっちのカクテルが気になったんだけどな……まあしょうがない。 今日はお付き合いするよ。


さて……と、料理に手を付けるか。


フォークとナイフを手に取りまずは白身魚から頂く。


白身魚にフォークを刺すと白身魚の弾力がフォークを通じて手に感じられた。


まずはピンク色のソースを付けずに口に含んだ。


凄い!! はち切れんばかりの弾力と旨味。 このオレンジ色のソースが酸味が効いてて美味しい。

……でも飲み物ビールというよりはワインとか果実酒の方が合いそうだな。


そう思いつつビールを口の含む。 ……うん。 これを飲み干してカクテルに行こう。


相楽さんも美味しそうに食べて……長谷川さん食べきるの早いなぁ。


まだ私のお皿は全然減っていないのに長谷川さんのお皿は空になっていた。 そしてビールも3杯目に突入してた。


領主の方は魚に慣れていないのか躊躇いが見られる。 そういや魚料理見なかったもんね。


座る姿勢も魚を切る姿勢も口に運ぼうとしてフォークに乗せるのもすごく綺麗だ。 ただ躊躇いからかすごいプルプルしてる。 生魚がダメなの? もしかしてここ選ばない方良かった?


じっと見過ぎていたからか目があった。


領主に苦笑された後にえいっと白身魚を口に放り込んだ。


決死の表情が徐々に変わる。 咀嚼が進めば何故か頷き始めた。


「泥臭く無いな……」


海の魚ですからね。


口に入れていたものを飲み込み味わうべくもう一切れ、今度は躊躇わずに口に含んだ。


「不思議な食感だな」


「旨いだろう?」


長谷川さんが上機嫌に問うと領主は、ああ、悪くないと答えた。


「長谷川さんコース早めてもらいますか? それとも気になる料理追加しますか?」


「良いのか? じゃあ追加頼む!!」


よほど嬉しいのかあっちで会った時とはまるで別人のようだ。

メニュー表を渡すと真剣に悩み始めた。


それから選べるのか? と領主もメニュー表を覗き込む。 その様子は気のおける友人同士のようだった。


長谷川さんが相楽さんに向かって何か食べたいものはあるか? と聞くと相楽さんからはソーセージの盛り合わせのリクエストが上がった。


それを聞くと長谷川さんは店員さんを呼び注文をした。


次のコース料理が置かれる頃にはテーブルが一杯になった。


長谷川さんが追加で頼んだものは各国のチーズ盛り合わせとソーセージの盛り合わせ、小海老のアヒージョ、トマトとバジルのマルゲリータ。 特にマルゲリータ宅配ピザのMサイズぐらいの大きさだ。 いやいいけど食べきれるの?!


ちなみに次に来たコース料理は季節の野菜の冷製スープ、間を置いてオマール海老のソテー温野菜添えだ。


置く場所が無くなるとついつい早食いになってしまう。


どれも美味しいくもっと味わって食べたかったと思いつつ、今度はレストラン系を攻めるかと気分を持ち直した。

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