第77話 ヴェルジェ村




それ以降魔獣と遭遇することもなくのんびりした旅路で最初の村に着いた。


村としては結構広い。


柵で囲いがなされ、その中で魔獣除けの魔道具が四方に設置されている。


柵の中に森がある何とも不思議な村だ。


「ここがヴェルジェ村だ」


ハンスさんが守衛に入村料を払い中に入れてもらった。


「うわー!」


各々家々に果物の木が植えてある。街路樹はサマーベリーだ。可愛い!


「いつ見ても美味しそうな村だよねー」


「可愛い村でしょ」


早速サマーベリーを摘むイリスさん。


お金払わなくても良いのかな?と思ったら入村料に含まれてるらしい。


村全体が果樹園みたい。


今日泊まる宿は村で唯一の宿屋らしい。


そこに馬を連れて行き、荷馬車は邪魔なのでアイテムボックスに仕舞った。


宿屋で男性陣と女性陣それぞれ部屋を取る。


「村の中見てきても良いですか」


「私達も行くー」


「一緒に行きましょう」


イリスさんとクイナさんと一緒に村を見て回ることにした。


あーもう! どこ見ても可愛い!


村はどの家も木の手入れが行き届いており、なにかしらの果物がなっている。この季節ってそんなに果物取れるの?まあ、ギルドで依頼したらそれなりに果物集まったから取れるのか。


一人納得しているとクイナさん達が観光果樹園の方に歩いていった。


観光できる果樹園まであるのか。


柵で囲いがしてある。


入り口に行くと人がいた。


腰まである緩くウェーブ掛かった黒い髪を束ねた垂れ目がちの女性だ。


「いらっしゃいませー! あら? イリスさんにクイナさん、お久しぶりですねー! 移住ですか?」


「違います」


「違うよー」


「そうなんですかー? あら? そちらの方は初めましてですね。 移住希望ですかー?」


移住? この村に?


果物沢山のこの村に?


……良いかも。


「移住希望です!」


「えっ?!」


「桜?!」


「そうなの! 宜しくね」


「桜!! 王都に行くんでしょ!」


「あ、忘れてた!」


「あらー…そうなんだ?」


イリスさんとクイナさんに止められてしまった。


「あ、そうだ私橋沼桜と言います」


「私は水島花純です。ここの果樹園を管理してます。宜しくねー!」


果樹園の管理してるんだ。だから麦わら帽子にツナギの格好してるのか。


「花純! 果樹園みても良いー?」


「良いよー」


イリスさんが聞くと花純さんは二つ返事で肯定してくれた。




「広ーい!」


果樹園には様々な果物が植えられていた。


流石にビニールハウスはないが果物によっては葡萄畑のような棚なんかは作られている。


端から順にスプリングベリー、サマーベリー、オータムベリー、ウィンターベリー、の苗が植えてある。


あれ?その隣って……普通の苺? ブルーベリーやラズベリーも……あれ? ブラックベリー……ちょっと待て。


桑に……クランベリー……もしかしてベリーの括りで纏まってる?


見ていた木々から首を動かし花純さんをみる。


「纏めちゃいました!」


親指を突き立てニコッと微笑まれた。 良い笑顔だ。


異世界や元の世界の果物ごちゃ混ぜだ。 環境とかpHとか種とかどうなってるの?!


頭が混乱した。


「いつ来ても果物の良い香り」


「虫も少なくて果物も美味しいよねー」


そんな事など気にもしないイリスさんとクイナさんは純粋に果樹園を楽しんでいた。



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