6月8日(土)

〈ハルト視点〉











じーちゃんと畑にいると「せいが出るな」と

兄ちゃんの声が聞こえてきて振り返った






ハルト「兄ちゃん!なんでいるの?笑」





タツヤ「よぉ!じーちゃん久しぶり!」





祖父「最近はよく来るな?笑」






じーちゃんの言う通りだった

兄ちゃんは年明けと2月にも来ていて

今年に入ってからここに来るのは3回目だ






( 去年、一昨年は一回も来てないのに… )



 



兄ちゃんは俺の顔を見てニヤニヤと笑っていて…

なんだか機嫌が良さそうに見えるし…





そのまま3人で家に戻り

シャワーを浴びて夕方のバイトまで

仮眠しようとかと思っていたけど…





滅多に会えない兄ちゃんも来ているし

バイトまで居間で一緒に過ごそうかと思っていると…







ハルト「えっ!?いたの??」






部屋に入ると兄ちゃんが

俺の椅子に足を組んで座っていた…






タツヤ「着ない夏服持って来てやったんだよ」





ハルト「えっ!笑 ありがとう!」






兄ちゃんのくれた服を紙袋から出して見ていると

「白玉とはどうだ?」と兄ちゃんが聞いてきて

顔を上げるとまたニヤニヤと笑っている






ハルト「・・・・順調だけど?」






タツヤ「なら良かった…笑

  夏は白玉と旅行とか行かないのか?」






ハルト「あっ!何処かいい所知らない?

   7月ヒナの誕生日なんだ!」






タツヤ「誕生日!?フッ…良いタイミングだったな」






兄ちゃんはそう言うと

俺に一枚の券を差し出して来て

「なに?」と受け取った






ハルト「株主…ゆう…たい…券?」





タツヤ「仕事関係でもらったが

  あいにく一緒に行く相手もいねーしやるよ」





ハルト「50%オフ?・・・ん?」





タツヤ「半額だよ!まー、一人分タダになるみたいなもんだな」





ハルト「・・・・ん?」






いまいちよく分からず「なんの券なの?」と

兄ちゃんに聞くと「はぁー」とタメ息を吐いて

スマホを取り出し俺に見せてきた






ハルト「プール!えっ!?部屋に??」





タツヤ「ハナレだからな…

  プールに風呂もついてるだろ?

  二人っきりだからゆっくりできるぞ?笑」





ハルト「プールか…」






この前、成泉達と話していてヒナとも

海や川に行きたいなと思っていたけど…






タツヤ「白玉の水着姿もお前しか見ないから安心しろ?笑」






兄ちゃんは…やっぱり俺の兄ちゃんで…

俺の考えが分かってるみたいだ…






ハルト「ここ1泊いくらするの?」





タツヤ「1人5万位だったか?」





ハルト「5万!?」





タツヤ「いいホテルだからな?

  半額で泊まれるのもラッキーだぞ?」






兄ちゃんのスマホに目線を戻して

ホテルの写真をスライドしていくと

確かにすごくオシャレで…

ヒナも喜ぶんじゃないかと思った…






ハルト「でも…指輪が…」






タツヤ「指輪?」






ハルト「ペアリングを買おうと思ってたんだ…

    でもコッチの方がいいのかな…」






ヒナに恋人がいるんだって分かる様に

指輪をはめててほしいけど…

誕生日の日にこのホテルでお祝いをしたら

いい思い出になるんじゃないかと思った…





タツヤ「一周年の時じゃダメなのか?」






ハルト「一周年…」






タツヤ「お揃いならもうピアスしてるだろうが?」






ハルト「・・・・分からないみたいなんだ…

    ピアスじゃ…彼氏がいるって…」






タツヤ「そーゆう意味でのペアリングか…笑」






ハルト「・・・・・・」






タツヤ「・・・指輪は…ちゃんと二人で選んだ方がいいぞ?」






ハルト「・・・・え?」






タツヤ「白玉の会社がつけれるかも分からねぇし…

  お前のバイトも飲食店だろ?

  結婚指輪じゃなくてオシャレ指輪扱いだから

  外さなきゃいけねぇ場所も多いぞ?」



 



ハルト「そーなの?」






タツヤ「それにそんな首輪つけたいみてぇな理由で

  やるんじゃなくて、ちゃんと白玉に

  プレゼントしたいって思えてから買ってやれ」






兄ちゃんの言う事は正しかった…

俺はヒナに自分のモノだと印をつけたいだけなんだ…

ヒナの胸元につけてるキスマークみたいに…







タツヤ「だから!!

  今年の白玉の誕生日は此処に行って

  二人で楽しく過ごせ?笑」






ハルト「・・・・うん、ありがとう!笑」






もう一度ホテルの写真を見ながら

ヒナとの楽しい旅行を想像していると…






タツヤ「水着楽しみだな?白玉なだけに?笑」





ハルト「・・・・・・」






俺はこの時兄ちゃんがヒナを知ってるなんて

知らなかったから…

まだ兄ちゃんがヒナをぽっちゃりだと

思っているんだと思っていた…









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