3月21日(木)

〈陽菜乃視点〉








残業もあと少しで終わると思いながら

重い足取りで帰っていると「あっ!」と言う声が

聞こえてきて顔を向けると(げっ…)と思った…






アキラ「ずいぶん久しぶりだね?」






私はアンタよりも年上なんだけど

と思いながらもこの子は少し苦手で何となく

怖いとすら思っているから言わずに飲み込んだ…






「・・・・今日はバイトじゃないの?」






アキラ「いや今から出勤だよ…

  病欠が出たから急に呼び出されたんだよ」






「へぇー…」






会話が弾むこともなく居心地悪く

目を泳がせると「行くよ」と言われ

「え?」と問いかけと






アキラ「夕飯まだでしょ?

  この時間から自炊はないだろうし…

  温めしてあげるからうちの店で買って帰りなよ!」






そう言ってスタスタ歩きだす彼の後を

小走りでついていきながらウサギがいつも

私に合わせて歩いていたのがよく分かった…






店に着くと「好きなの持ってきて」と言って

スタッフルームに入っていく後ろ姿を見ながら

「私は客で年上なのよ…」と呟いた…






ウサギが仲がいいのは知ってるけど

やっぱりヤな奴ねと思いながらカゴを手に取って

お弁当売り場を覗いていると…






アキラ「魚食べた方がいいよ!シャケ弁当は?」





「・・・・ありがとう…」






この子相手だと何も言い返せなく

食べたくもないシャケ弁当を買う事にした…







アキラ「陽兎は今日も研修らしいね?」






「えっ…あぁ…バイトのね」






アキラ「嫌じゃないの?」






「いや??」






アキラ「陽兎が同世代の女の子達と楽しく騒いでるの…嫌じゃないの?」






「・・・・楽しんだらいいと思うけど…」




 


アキラ「・・そんなものなのかな?」




 


「へ??」






アキラ「いや、コッチの話だから

  ハイ!残業お疲れ、早く食べて寝なよ」



 




温められたお弁当を受け取り

「ありがとう」と伝えてからコンビニを出て

アパートへ帰り着くと

直ぐに温かいお茶を煎れて

シャケ弁当を食べてみた







「・・・・意外と美味しい…」








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