〈ハルト視点〉








家に帰り急いで荷造りをしていると

ばーちゃんが実家への土産を用意していたみたいで

「持って帰りなさい」と差し出して来た








ハルト「ありがとう、母さんに渡しとくよ!」

 

 






祖母「お爺ちゃんが呼んでるから

  荷造り終わったら居間においで」







そう言うと部屋から出て行くばーちゃんに

「分かった」と伝えてトランクに洋服を

詰め込んでいき、じーちゃんのいる居間へと向かった






ハルト「じーちゃん、準備できたよ」






新幹線の駅まで、じーちゃんから車で

送ってもらう事になっていて

余裕を持って早めに家を出ると言っていたから

「時間大丈夫かな?」と言いながら

居間に入るとじーちゃんが「座りなさい」と

笑った顔で言うから何だろと思いながら座った







祖父「次に会う時は正月も成人式も

  終わってるからな先に渡しておくよ」







そう言って俺の前にお年玉袋と

もう一つ…少し大きめな封筒を俺の前に差し出して来た






ハルト「お年玉と…お祝い??」







封筒に祝いと書かれている文字を見て

何の祝いか分からずじーちゃんの顔を見ると







祖父「成人式のお祝いだよ、何か買ってもいいし…

    お前の好きに遣いなさい」






ハルト「えっ??俺が貰っていいの??」






祖父「龍也の時も渡してあるから大丈夫だ!笑」








お年玉よりも、明らかに沢山入っているであろう

その封筒を手に取り「ありがとう」と伝えると

じーちゃんは笑いながら立ち上がり

「そろそろ出るぞ」と車のキーを取り出した






トランクを持ち、ばーちゃんに

「また来年も宜しくお願いします」と頭を下げてから

家をでて車に荷物を乗せて駅へと向かった







祖父「昨日は楽しめたか?笑」






ハルト「んー…楽しめたよ!笑」






祖父「そうか、久しぶりにいい笑顔で

  帰って来たからな…楽しかったならいい」







じーちゃんの言葉に「へへ…笑」と自分でも

可笑しくなり笑いがでる…

ヒナと離れたあの日、朝帰りをした俺を見て

じーちゃん達は驚いていた…

たぶん、俺の目が真っ赤になっていて

夜通し泣いていたのが分かったから…





心配かけないようにと明るく振る舞っていた

つもりだったんだけどバレていたんだ…

そして、今日帰って来た時の自分の顔が

余程だらしなかったんだろうと思った…








ハルト「畑しばらくは、じーちゃん一人だけど大丈夫?」






祖父「はは…大丈夫だ!

  お前の畑の手入れもちゃんとしといてやるぞ」






ハルト「2週間とちょっとか…なんか寂しいね?笑」






祖父「畑がか?笑」






ハルト「畑もだけど、じーちゃんとも会えないし…

    ばーちゃんのご飯も食べれないからね…」






祖父「母さんの飯は

   ばーさんのと味はあんまり変わらないだろうが?」






ハルト「母さんのと…少し違うよ?

  帰って来た日はまた生春巻きが食べたいな…」






祖父「伝えておくよ…笑」







駅までじーちゃんと畑の話や母さん達の話をしながら

1時間ほど車に揺られていた…

今までも帰省する時には、じーちゃんが車で

送ってくれていたけど、こんな風にスマホも触らず

ずっと話をしていたのは初めてだった





駅に着きじーちゃんに送ってもらったお礼と

貰ったお祝いのお礼を伝えてから

駅に入って行き手続きを済ませて

トランクを押しながらまだ少し時間があったから

ある場所へと向かってみた…







ハルト「・・・・懐かしいなぁ…」






トイレ横の自販機を見ながら自分の右耳を触り

耳たぶの感触を感じ口の端がニッと上がった



昨日まで俺の右耳にあったあのピアスはなく…

今朝からまた、ヒナの右耳につけられている







「ハルの事を…可愛いだけじゃないと思ったのは

 あの駅でピアスの話を聞いた時だったかな…」







ヒナの右耳にピアスをつけている時に

「そうそう」とヒナが笑いながら言い出して…

あの場所に来てみたくなった…





俺は「フッ」と笑ってからスマホを取り出し

写真を撮ってから新幹線の乗り場へと向かい

新幹線の席に座ると

さっき撮った写真をヒナに送った







( あの人は鈍いならなぁ…分かるかな… )








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