第6話


「──と、いう事らしいのです」


 ミランダはセシリアの話を出来るだけ簡潔にフィリップに告げた。

 フィリップは一拍置いた後、ミランダを真っ直ぐ見つめた。


「分かった」

「え、信じるのですか?」

 瞠目するイーサンに対し、フィリップは小さく頷いた。

「ミランダと別れるなんて考えられないから、そんな話は聞きたく無いけれど。万が一起こったら回避しないといけない未来だから。それに……」


 テーブルの上に置かれたものをチラリと見て、フィリップは頷いた。

 そこには本人曰く、セシリアが回帰した証拠が置いてある。

 ミランダも半信半疑であったが、それをフィリップも支持するとなれば心強く思う。


「……そんな……フィリップ様」

 一方呆然とするセシリアを、フィリップは何の感情も表さないまま真っ直ぐに振り返った。

「僕は君を未来永劫愛する事はない。……いや、君だけじゃなくて、ミランダ以外は考えられない」

 ショックを受けながらも落ちていた顎を戻すセシリアに、フィリップは小さく頭を下げた。


「すまない」

 フィリップの動作にセシリアは一瞬大きく目を見開いた。

「……っふん! い、いいわよ! 別に!」

 泣きそうな顔でそう叫んび、ぐいっと袖口で顔を拭う。ミランダはその意地らしさに傍に寄ろうと近付くも、フィリップに手を取られた。


「この子の事は後だ」

「……フィリップ様」

 瞳を揺らすミランダに対し、フィリップは全く動じていないようだ。


「解決策を考える」

 そう言われミランダも頭を巡らせた。

「……あの、でも。例えば式を一ヵ月も早めるとかですか? ……でも招待状は既に発送済みですし、難しいですよ?」

 首を傾げるミランダにフィリップは珍しく口の端を上げて、小さな笑みを作った。

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