第18話 揃い踏み強敵達!登場、神沢妃美香(4)
「どうかしたの?」
恵が不意に後ろから掛けられた声に振り向くと、赤いバッグを持った子が立っていた。
「どうかしましたか?」
バッグを持った子が恵に訊ねながら中を覗き込んで女の子を見ると、理解できたばかりうなずいた。
「は~ん。メグちゃんまたイタズラしたんでしょ」
「なっ何にもしてないよ」
「ほんとうにー」
「ホントだよ。ホントにホント」
そう言いながらメグという女の子は慌てて部屋から出ていった。
恵はメグの慌てた姿を見送りながら部屋へ入っていった。
「ご免なさいね」
女の子はロッカーにバッグを入れると恵の方に顔を向けた。ショートカットがよく似合っており、背丈は恵と同じくらいだった。雰囲気的には奈美のように落ち着いた感じだが、その髪型からどことなく活動的な面もうかがわせていた。
恵は女の子の丁寧な物腰に戸惑っていた。
「えっ・・・・・・」
「きっと私と間違えちゃったのね。気を悪くしたらご免なさい」
「いえ、べつに何とも思ってないですよ」
「だといいんだけど。それでメグは何をしたの?」
女の子は微かに笑いながら恵にきいた。
「エイリアンの頭を見せてもらいました」
「エイリアン?」
「はい、これです」
目を大きく開けて考え込む女の子に、恵は自分のまっさらの黒色のヘルメットを見せた。
二人はしばらく沈黙していたが、女の子が突然こらえきれずに笑い始めた。
「メグったら、ほんとあきないんだから」
女の子がお腹を押さえながら笑う姿に恵もつられて笑い出した。
「あのう、隣のロッカーいいですか?」
「ええ、どうぞ」
女の子はなんとか笑いをこらえて、着替えを始めていた。恵もビニールに包まれたままのユニホームを取り出した。まだ袖を通してないあの新しい物だけが持つ繊維の臭いがした。
恵はゆっくりと上着に袖を通した。繊維が肌をくすぐった。上着のファスナーをゆっくりと上げると、背中の右肩の部分から斜めに青文字でASAMIと書かれており、それが黄色の布地によく浮かんでいた。胸にはMIZUKIと同じく青字で書かれていた。
(少し胸が目立つかな・・・・・・)
恵がそう思いながら隣を見たとき、その心配はバカらしく思えた。女の子が着替える前は気付かなかったが、ウェアを身に着けたとたん見事なぐらい丸みを帯びた綺麗な体をしていた。恵自身、そのプロポーションに目を奪われたくらいである。
「どうかしたの?」
女の子はあんぐりと口を開けていた恵を見ると続けて言った。
「ああ、ASAMIって朝見校のこと」
「ああ、うん。そう」
「へー、じゃあ高校の部活のチームなんですか?それじゃあ、私と同じですね」
「えっ!本当ですか?」
恵は何を見て思ったのか信じられないという顔つきで、というより実際信じていない顔つきで言った。
「はい、私、東第一校の
そう言いながら有紀は手を出して握手を求めた。
「あっ、私、朝見校自転車部の水城恵です」
恵はすぐさま有紀の手を握った。有紀も笑顔で握り返した。
(この人とは仲良くできそうだな・・・・・・)
恵はそう直感しながら笑顔で応えていた。
「ところで、さっきの子は知り合いですか?」
「ええ、彼女は
「ええ、そう思います」
「ところで水城さん、朝見校なら相沢って知らない?」
「知ってますよ」
恵は少し驚いたがすぐに知ってて当たり前だと思った。
「しっかり朝見校の自転車部員です。おまけに三井瞬もいます」
「三井?ああ・・・・・・あの元気な人ね」
「知ってるんですか?」
恵は冗談のつもりで言ったのだがこの展開には驚いた。だが、そもそも瞬がどれほど印象強いのかを考えればやはり納得のいくものでもあった。
「確か去年の大会で相沢君と争った人でしょう。あの時はけっこういい展開で印象が強かったから憶えてるの」
「へー、新川さんて記憶力が良いんですね」
「ありがとう。それじゃあ私、先に行くね」
有紀はそう言うと恵に頭を下げて部屋を出ていった。その背にはSSSの文字があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます