#20:蒼龍討伐
「とりあえず……《
この魔術を使ったとき、効果音として時計の針の音が鳴る。
しかし、今回はなぜかそれが途中で止まり、効果を解除したときの音が鳴ったのだ。
「もしや……レジストされた……!?」
この空間が時の操作を許さないのか、それとも目前のドラゴンの仕業か、判断するのは難しい。しかし魔術が無効化されたという結果だけは存在する。
「くっ! 仕方ない……!」
僕は剣を抜き、構える。
「【存在昇華】!」
全速力で突っ込んでいく。
「《防護障壁》!」
身体の周りに青白い障壁を展開する。
そしてドラゴンの鱗を一閃。
「よしっ!」
斬れた。だが……
「なっ……嘘だろっ……!?」
傷口が塞がっていく。
「これじゃあ倒せないじゃないか……!」
そう言いながらも攻撃を続ける。
「はぁ……はぁ……はぁ……しょうがない。剣で倒すのは諦めるしか無いな」
潔く魔法での攻撃に専念することにした。
その証明としてまずは剣を収め、効きそうな魔法の名前を詠唱し始める。
「《
すると、一瞬にして周囲の温度が下がり、地面が凍り始める。
そしてその範囲は徐々に広がっていき、遂には辺り一面が凍結した。
「これで少しは時間が稼げるかな……」
そう呟きながら次に詠唱するのは……
「《
今度は炎の嵐が巻き起こり、炎の波が辺りを焼き尽くす。
勿論、先程の凍結は溶けてなくなっている。
「ふぅ~。流石にこれだけやれば大丈夫だろう……」
……と思っていたのだが。
そんな淡い期待と煙を切り裂いて鉤爪が現れた。それは僕の身体を貫こうと迫ってくる。
「なっ!? 《
咄嵯の判断で防御用の魔術を唱える。
「ぐあっ!!」
何とか防げたが、かなりのダメージを負ってしまった。
「痛い……けどまだ動けそうだな。……ってえぇ!? もう僕の傷が塞がってきてる……この体って再生能力までやばいのか?」
そんな事に驚きながらも、ドラゴンの方を向き直す。
どうやら先程の魔術で鉤爪が吹き飛んだようで、一番長い指から血が流れている。
(チャンスだ!)
「喰らえ! 《
無数の光の弾丸がドラゴンを襲う。
そして全て着弾し、爆音と共に土埃が上がる。
「やったか……?」
しかし、次の瞬間には土埃の中から大きな腕が伸びてきて僕を掴んだ。
「なっ!?」
そしてそのまま握り潰される。
「うわぁああ!!」
必死に抵抗するものの、全く歯が立たない。
このままでは死んでしまう……なんてね。そこでくたばる僕じゃない。
邪悪な笑みを浮かべ叫んだ。
「《
この魔術は接触している物の内部に腐蝕させる魔力を流し込むものだ。 ドラゴンは思いっきり僕の身体に触れている。
つまりは全て残さず流れ込むわけで――
「グォオオオ!?」
ドラゴンの悲鳴が聞こえた。
それと同時に僕は地面に叩きつけられるように放られた。
「くっ……ドラゴンはどうなった?」
そう思い、顔を上げる。そこには……
全身が黒ずみ、所々が腐り果て、一部は肉体から熟れた果実のように肉が落ちてしまったドラゴンの姿があった。
「まさかここまでの効果とは……」
あまりのグロさに思わず声が出てしまう。
「これは……やりすぎたかもしれない……けどまぁいっか……」
僕はドラゴンの死体に近づく。
「さて、こいつの素材でも剥ぎ取るとするか……」
そう言って剣で腐らず残った鱗を斬り落とす。そして《空間収納》――俗に言うアイテムボックス的な魔法――に入れていく。
「ん……なんだこれ……?」
すると、ドラゴンの体内にあったらしい何かを見つけた。
「……指輪か。こんなのが入ってるなんて……。【鑑定:概念支配】」
正体が気になった僕は鑑定してみることにした。
☆指輪
・一般的な指輪。価値は銀貨10枚程度。
そんな表示が出たので気にすることなく、
「ふ~ん……とりあえずこれも入れとくか」
そして全ての鱗を取り終わった後、僕は再び歩き出した。
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