第49話 死せる魔王、生ける勇者を走らす。
「さすがドラゴンの考えは突き抜けてワイルドだな……」
例え血を分けた肉親であっても、弱いから負けたのだとあざ笑う。
なるほど、俺はドラゴンという種族をまだ全然理解できていなかったようだ。
肉親の情よりもただただ強さを求め続ける。
その姿こそが、最強種たるドラゴンのドラゴンたる
そしてそんな風に人間の価値観とは一線を画すドラゴンの姫と俺は今、対峙しているのだ。
俺はわずかの油断もすることがないよう、改めて気を引き締め直した。
今から始まるのは文化祭のお遊びとは一線を画す、決して敗北が許されない戦いなのだから――!
「そもそも我が父は何が楽しくて、自ら進んで脆弱なる人間どもを殺し回っていたのか。
「そりゃあ自分の強さを人間に知らしめるためだろう?」
「ふん、地べたを這いずり回るだけのひ弱な人間ごときに勝って、いったい何が誇れると言うのじゃ。しかも挙句の果てにその人間どもの勇者であるシュウヘイ=オダに討たれたのじゃから、我が父ながらほんに愚かとしか言いようがないわ」
「一応、実の親なんだからそこまで言わなくてもいいんじゃないかな……?」
死力を尽くした大激戦の末に息の根を止めた張本人の俺が言うのもなんだが、悪の竜王と言えども娘にまで愚かと言われるのはさすがにちょっと同情するぞ?
「愚者を愚者と言わぬは、それこそ愚者の証左というものじゃ」
しかしドラグレリアは、あっけらかんとした態度で俺の同情論をぶった切った。
ドラゴンってどこまでもドライだなぁ……。
「とりあえずかたき討ちに来たわけじゃないのは分かったよ。じゃあなんで俺に会いに来たんだ? しかも世界を渡ってまで。そもそもどうやって世界を渡ったんだ? そんな簡単に渡ってこれるもんでもないだろうが?」
リエナも、最初に俺を異世界召喚した時はかなり苦労をしたって言っていたしな。
まず古代の文献をひも解いて異世界召喚に関する禁術を研究し。
それを元に高度で難解な転移術式を構築する。
その術式を実際に起動するための複雑で精緻な魔法陣を制作し、女神アテナイの祝福が最も濃くなる日時と場所を選んで勇者召喚の儀式を行ったのだ。
「なに。つい先日、この世界に渡ったやつがおっての。ちょうどよいタイミングじゃったから、そやつの開けた次元の穴が塞がりきる前に
「……それってまさか魔王カナンのことか?」
「興味ないゆえ名前なぞ知らぬ。空間に干渉する特殊な術だけは、なかなか見所があったがの」
「ああそう……」
「しかしさすがの
だけどきっかけさえあれば強引にできてしまうわけか。
ほんとどうしようもなくヤバイ種族だな、ドラゴンってのは。
茶飲み友達に縁側で日向ぼっこしながら世間話をしてるおばあちゃんみたいにサラッと語ってるけど、言ってることマジでおかしいからな?
そしてタイミング的にも間違いなく
死んでもなお俺に迷惑をかけ続けるとか、魔王カナンはどれだけ俺と因縁があるっていうんだ……。
魔王カナンを『オーフェルマウス』で倒す
↓
でも生き伸びていてこの世界で再戦
↓
今度こそ倒したと思ったら置き土産にドラゴンを召喚(今ここ)
さすがの俺もキレるぞ?
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