第31話 異世界を救った勇者、怒りの制裁。(ざまぁ)(1)

「これって何回でも無料で挑戦できるんだよな? ってことは、10回ダブルビンゴをしたら、10×2で20枚のケーキカフェのセット無料券を貰えるってことか?」


「そういうことになりますね」


「へぇ、そいつはまた気前がいいんだな」


「文化祭はお祭りですからね。僕らの利益は度外視して、皆さんに楽しんでもらいたいんですよ」


「なるほどなぁ」


 だからさ?

 お前も口元がニヤついてるのを隠せよな?

 さっきの呼び込み担当の生徒といい、薄汚い心がジャブジャブと外に溢れ出ているぞ?


 どうせ『やれるもんならやってみろ、すぐにカノジョの前で泣きべそかかせてやるぜ、ざまぁ(笑)』とか思ってるんだろうなぁ。


 しかし、だ。

 俺はもうこの時点で既に、このリングの特性を完全に把握していた。


 輪投げのリングは『戦輪』──いわゆるチャクラムという武器と限りなく同義だ。


 よって武器を扱うための勇者スキル『ブレードマスター』が発動し、リングをどう投げたらどう飛ぶかは完全に理解できていたからだ。


 もはやこのリングを投げることは、俺にとっては歩くことや息をすることと変わらない。


 魔王カナンを2度倒し、『オーフェルマウス』とこの世界を救った『絶対不敗の最強勇者』シュウヘイ=オダの実力を舐めるなよ?


 力の違いを見せつけてやる。


「ではどうぞ」

 どうにもニヤつきを抑えられないでいる運営担当に促された俺は、


「じゃあまずは右上を狙うとするか。ほいっと」

 1投目を投げた。


 軽く投げたリングは、美しい放物線を描いて飛び。


 ストン。

 軽快な音とともに、あっさりと狙った通りに右上の棒にハマった。


「……え?」

 それを見た運営担当がポカーンと口を開けたままで固まる。

 

「まずは1つ目だな。じゃあ次な、ほいっと」

 次は真ん中に。


「ほいっと。よし、まずはこれでビンゴ1つだな」

 さらに左下の棒へとリングを投げこんで、わずか3投で俺はきっちりビンゴを決めてみせた。


(状況)

□□■

□■□

■□□


「な……? え……? は……?」

 そんな俺の様子を見て、目をパチクリさせて間抜けな声を上げ続ける運営担当の生徒。


「どうしたんだ? 何をそんなに驚いているんだ? まだビンゴは1つ目だろ? 次は2つめのビンゴを狙いに行くぞ?」


「あ、は、はい……ど、どうぞ」


「じゃあ次は右真ん中と、右下を狙おうかな。そうしたら右上を共有できて1個お得だもんな。ほいっ、ほいっと」


 またまた軽く、しかも立て続けに連続して投げた4投目、5投目で、右真ん中&右下の棒に苦もなくリングをはめた俺は、いとも簡単にダブルビンゴを達成した。


(状況)

□□■

□■■

■□■


「…………」

 ノーミスの最短ルートでダブルビンゴを達成した俺を見て、言葉を失う運営担当。


「どうしたんだ? ダブルビンゴを決めたんだぞ? おめでとうとか言わないのか?」


「あ、え……はい、えっと。ダブルビンゴ、お、おめでとうございます! 景品のケーキカフェのセット無料券2枚です。ど、どうぞ!」


 運営担当の生徒は完全に引きつった顔をしながらも、どうにか声を張り上げてダブルビンゴを祝福をしてくれた。


「やりましたね勇者様♪」

 リエナが胸の前で軽く手のひらを合わせて喜びの声を上げる。


「ま、これくらいは楽勝さ。今度の週末にでもこの券を使って一緒にケーキセットを食べに行こうぜ」

「はいっ♪」


 さて、と。


「ってなわけで2回目だな」


「えっ?」


「『えっ?』ってなんだよ? 何回やっても無料で、ダブルビンゴを成功させるたびに、駅前のケーキカフェのセット無料券が2枚セットで貰えるんだよな?」


「あ、えっと……は、はい……」


「じゃあ2回目に挑戦するな。ハマったリングを取ってきてもらっていいか?」

「えっと、はい……すぐに……」


 そして再び0から輪投げをリスタートした俺は、またもや最短の5回の投擲でダブルビンゴを達成してみせた。

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