何となく推してみた地下アイドルが日本一のトップアイドルになっていた。引退後、推しが俺を惚れさせようと必死なんだけど。

俺の推しは世界一

　現在、日本で知らない人はいないであろうトップアイドルグループ。

　黒髪ショートカットの七瀬（ななせ）優里（ゆり）。

　桃色ツインテールの、早乙女（さおとめ）葵（あおい）。

　腰まで届く金髪ロング、如月（きさらぎ）星奈（ほしな）。

　星奈をリーダーとする、今最も熱い美少女高校生アイドルである。

　コンサートのチケットはいつも完売。席は満杯。

　CDを出せばミリオンセラー。

　バラエティ番組、CMにも数多く出ておりテレビで見ない日はない。

　そんな日本の人々を魅了するアイドルグループの名は【シューティングスター】。

◆◇◆◇◆◇

　俺は神宮寺（しんぐうじ）伊織（いおり）。

　高校入学したから少し変わったことがしたいと思った。

　だから、アイドルを推すことにした。

　そんなふざけた理由で俺は人気のない地下アイドルの3人組アイドル、シューティングスターのファンとなった。

　その中で推しにしたの星奈ちゃんだ。

　腰にまで届く金髪。小さな顔。モデル体型。

　かわいい。まあ、かわいいんだけどテレビに出るようなアイドルと比べたらって感じの子だ。

　とりあえず推しを作ったから、ライブに行った。全ての。

　そして、グッズも全て買った。握手会も勿論行った。

　やるからには全力で推す。

　いやー、顔と名前を覚えてくれてた時は嬉しかったな。

　星奈ちゃんはいつか大きなステージでアイドルするのが夢らしい。

　それを聞いたとき、俺は素直に応援したくなった。

　だから、「応援してます！」と伝えた。

　――1年前に。

「おい、シューティングスターのライブのチケット当たったか？」

「当たるわけないだろ……」

「昨日の星奈ちゃんもかわいかったね」

「ね！毎日かわいくなってるよね！」

　なんて言うか、星奈ちゃんがトップアイドルになりました。

　ファンとして嬉しいよ。

　まさか、推しがここまで大きくなるとは……。

　当時、ファンがついてないアイドルがいたから推しただけなのに。

「おい、キモオタ。お前はチケット当たったかよ？」

「こいつに当たるわけねぇだろ」

「そ、そうだね」

　席に座っていると陽キャに絡まれた。

　いや、持ってるけどね。

　何か当たるっていうか、手に入るんですよ。俺宛に誰かが郵便で送ってくれるんですよ。

　たぶん公式ファンクラブ会長の特権だと思う。

　うん。なんかいつの間にか会長になってたんだよね。

　誰がしたのやら。

「きも」

　そっちから絡んで来といて何なのその態度。

　俺なにかした？

　確かに髪ぼさぼさだし、目もと隠れていて陰キャ感出てるけど。実際陰キャなんだけど。

　でも仕方ないんだよ！星奈ちゃんのグッズとかCDとか買ってたらバイトしてても金がなくなるんだよ！

　髪が切れたら陰キャ感が薄れると思うんだよな。

　薄れるだけであって陰キャには変わらないけど。

　これは全部星奈ちゃんのせいです。

　星奈ちゃんがかわいいからついついお金を使ってしまう。

　つまり、星奈ちゃんは世界一かわいいってことです。

　俺の推しが最強。