第5話 思い出のゲーム。そして…




「ふぁぁ〜、眠い…」


 今日もいつものように欠伸をしながらの登校。


 昨日は結局朝の4時までRENとゲームをしていた。次の日学校があるのは分かっているのに。

だが、分かっていてもやめられないのだ。ダンジョン探索にモンスターとのバトル、そんな現実離れした世界が俺には輝いて見えるからだ。どうやったらゲームの世界に転生できるか真面目に考えたこともあるくらいだ。それにあの世界ではRENというゲームで繋がった大切な仲間だって待っている。そんなゲームをやめられるわけないだろ。


 そんなことをグダグダ考えているうちに教室に着く。


「おっはよー、ハルー」


「おはよう、晴」


 先に来ていた陽葵と風道が迎えてくれる。陽葵は今日も元気いっぱいだ。


「おう、おはよう」


 俺は挨拶を返しつつもふと教室の後ろの方に目を向ける。


 涼姫さんだ。


 涼姫さんも先に来ていたようで、自分の席で1人で黙々と本を読んでいる。ゲームの時の姿を一度見てしまった俺からすると、正直同じ人とは思えない。


 ちなみに俺と涼姫さんはクラスでは話さないようにしている。いや、正確に言うと、話さないようにしようと俺から涼姫さんに頼んだのだが。だって想像してみてほしい。学校一の美少女と放課後2人でゲームしているなんてクラスや学校の連中に知られたら、女子には質問攻めにされるし、男共には羨ましがられて殴られるに決まってる。想像しただけで体が震えてくる。


 部活以外の時はあくまでクラスメイト、いや「話したこともない他人」の関係でいることが俺の身の安全のためになるのだ。陽葵と風道にも悪いが今はまだ黙っておこう。



「なぁ晴、今日の放課後カラオケ行かないか?

彼女と別れたばっかで、ぱーっと歌いたい気分なんだ」


「何それ私も行きたーい!今日部活ないし私も

行くー」


 と俺が1人で考え込んでいる内に2人でそんな話になる。てか、風道のやつまた別れたのか、一体何回目だ。もはや、俺も陽葵も驚かなくなっている。


「あぁ……すまん。今日はちょっと用事があっ

 ってな」


 凪の時と同じような言い訳をする。


「用事?お前帰宅部で暇だろ?」


「そうだよ、ハルの用事ってどうせゲームでしょ!」


 2人とも散々な言い様だ、ゲームって……。ほんとにみんな俺のこと何だと思ってるんだか。


「今日はほんとに用事があるんだよ」


 まぁ、ゲームをするのは本当なんだが。


「ちぇ、なんだよ。付き合い悪いなぁ」


「もう〜、今度絶対埋め合わせしてよね、ハル!」


「あぁ、分かったよ」


 申し訳ないと思いつつも、俺は自分の身の安全と面倒な事から回避するために必死になっていた。










 放課後、俺は陽葵と風道と別れ、1人ゲーム部

の部室に向かった。今日も涼姫さんに呼ばれ、一緒にゲームをする予定だ。


「おつかれー」


「あ、きたきた。月ノ瀬君お疲れ様」


 先に来ていた涼姫さん。もうすでにフレコンの準備をしている。もしかして、またモンティーカートをやらされるのだろうか。


「今日はね、これをやろう」


 そう言って後ろの方から取り出したのは、ある有名な格闘ゲームだった。


 ブレイブファイターズ。それがこのゲームの名前だ。モンティーカートと同じく、昔から世界中で人気の超有名タイトルで、その競技性の高さから毎年世界大会も行われている。


 よかった、モンティーカートじゃなかった。


「これね、私の思い出のゲームなの」


「思い出?」


「うん。小学生になったばかりの頃、ある男の子に勧められて私が初めて遊んだゲームがこのブレイブファイターズなの。言わば私がゲーム好きになるきっかけになったゲームね。」


 格闘ゲームが涼姫さんのイメージに合わないと思っていたら、そういうことだったのか。


「ブレファイは俺も昔ハマったなぁ。必殺技のコマンドとか一生懸命覚えてさ」


「ふふっ、私に勧めてくれた子もそんな感じだったかも。何も分からない私に目を輝かせながら教えてくれて」



 そんなゲーム友達俺も欲しかったな。今でこそRENというゲーム仲間がいるが、昔はそんな奴なんていなくてずっと1人で遊んでいた。幼い頃から好きな事を共有できる友達がいたらどれだけ楽しかっただろう。 


「そいつとはもう遊んでないのか?」


 ふと気になったことを聞く。


「うん。私がすぐにお父さんの仕事の関係で引っ越してから疎遠になっちゃった」


「それは残念だな…」


「まぁ、今はこうやって月ノ瀬君が遊んでくれるしねっ」


 ふふっと微笑む涼姫さん。


 そう言ってくれるのはすごい嬉しいが、なんか恥ずかしいというかこそばゆい。


「ということで、やろっか!」


「そうだな」


 まだゲーム部を作ってそれほど経っていないというのに、俺のことを大切なゲーム仲間と思ってくれている涼姫さん。


 そんな事実が俺をドキドキと、そして嬉しくさせてくれるのだった。




 

 しかし、そんな時だった。部室の扉が開いた。





「ハル?こんなとこで何やってるの?」




 そこに立っていたのは、陽葵だった。





_____________________


まきしむです!

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次回修羅場です!



では!


















 


 


 

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