最終話 だから、早く“最強の勇者”になれ......

 回復魔法をかけ終わり、傷はある程度治ったものの、体力の消耗が激しく、弦人は竜児に肩を借りて立ち上がった。


 他の団員たちは三々五々拠点へ帰っていっている。


「静、わりー、俺の剣持ってもらっていいカ?」


「ああ......」


 静はあたりを見回し、弦人の剣を見つけた。


 あれだけの戦闘だったからなー......

 普通の剣だったら、もう使い物にならないかも......

 勝利祝いに、新しい剣でも買ってやるか......


 静はそう思いながら剣を拾い上げ、刀身を観察する。


 え......


 静は驚愕した。

 静の予測では剣はもうぼろぼろで使い物にならないと思っていた。

 だが、しかし........


 刃こぼれ一つない......


 ありえないことだった。

 剣戟での物理的ダメージも、魔法のダメージも相当あったはず。

 普通の剣ならば、無傷なんてことはありえない。


「弦人、この剣、どこで手に入れたんだ?」


「え?あー......もらったんだヨ」


「誰から?」


「真島」




『水と食料、それから安物だが...』


『盾の勇者や槍の勇者ってのもいいが、勇者と言えば、やっぱり剣だろ』




「真島からもらった......」


 静はそう呟きながら、あらためて剣を見つめた。

 見た目はごく普通の安物の剣だ。

 だが、その刀身はどこか妖しく光っていた。


「まさかな......」




 同時刻、ザスキア王国北部辺境。

 深い森の奥にとある古城があった。

 数十年前までこの地域を治めていた辺境伯が失脚し、今は廃城となっている。

 その城の最上階のバルコニーで、本を読みながらお茶を飲んでいる人物がいた。

 セミロングの金髪で、黒いワンピースを着た5〜6歳の幼女である。


 そこへ、黒髪のメイド姿の若い女が現れる。


「失礼致します。猊下」


 メイド姿の女は恭しく頭を下げた。


「うん?どうした?」


「来客にございます」


「ほう、誰だ?」


「真島妖一めにございます」


「ほう.......」


 幼女はその名を聞き、ニヤリと笑う。


「いかが致しましょう?」


「ちょうど退屈していたところだ。通せ」


「は、かしこまりました」


 数分後、メイドに連れられて真島妖一が現れた。


「ご無沙汰しております。魔王イン・ディビュア猊下」


 真島はそう言って跪礼する。


「この前は、突然滞在先に現れたかと思ったら、いつの間にかいなくなってしまいおって。いつもながら忙しい奴だな......」


「は、恐れ入ります」


「それで、今日の用件はなんだ?」


「は、相馬弦人について......でございます」


 真島はそう言って、にたーっと笑った。


「いかがでしたか?相馬弦人は?」


「おもしろい男だった。なにより“レベル0”からスタートというのがよい」


「ありがとうございます。私もあの男が最もふさわしいと判断しました」


「では、やはり、あやつが持っていたのは......」


「はい、“伝説の勇者の剣”にございます」


 そう聞いて、幼女、魔王イン・ディビュアはくくくっと笑った。


「お前が私が選んだ男から剣を奪ったあと、戯れにお前に次の持ち主選びを任せたのは正解だったな」


「恐れ入ります。あの男ならば、必ずや“伝説の勇者の剣”を至高の武器へと昇華させることでしょう」


 イン・ディビュアは本を閉じ立ち上がった。

 そして、空を睨んで、不敵な笑みを浮かべる。


「ゲント、楽しみにしているぞ......我ら魔族の1000年の悲願......お前が叶えるのだ......だから、早く“最強の勇者”になれ......」




 第二部 完




ここまでお読み頂き誠にありがとうございました!!

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宜しくお願い致します!!


https://kakuyomu.jp/works/16816927859644967220

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