16《終決・ゴブリン戦》
リューセイとクライスは、ゴブリンの大群に攻撃されながらもひたすら戦っていた。
そんな二人の様子をみながらアベルディオは、いつでも対処できるように身構えている。
(すまない、二人とも。魔法で攻撃することができれば、俺もおまえ達と一緒に戦えるのに、)
アベルディオは、そんな自分に対しはがゆく思えた。
一方ユリエスは、木の上からクロスボウを構えていた。そして、ゴブリンキングに狙いを定めている。
(ふぅ〜。下で二人が話をしてたから。ゴブリンに気づかれないかって、ヒヤヒヤしたけど心配ないみたい。
今はリューセイとクライスだけしか、眼中にないってことは……。これなら、もしかしたらなんとかいけそうかも!)
そう思いながら、クロスボウの台座に描かれている魔法陣に手を添えた。
《シューティング!!》
そう唱えユリエスは、ゴブリンキングの方へと矢を発射する。
「イケェー! あたれぇぇ〜」
ユリエスはスコープ越しからそう願い矢の向かう先をみた。
そのころイシスは、つえを構えながら考えていた。
(ゴブリンを攻撃するにも、これではリューセイとクライスを巻き添えにしてしまいます。ですが、こうやって考えている間も二人は)
「……ハッ! そうでした。こんなことを考えてる場合じゃありません。それに、そもそも選択肢は一つしかないのですから」
そう思いイシスは、つえを斜め前に翳すと詠唱し始める。
《天を制する聖なる光よ 雷鳴を轟かせ 暴れまわれ--ライトニング バースト!!》
そう唱えると、つえが金色の光を発した。それと同時に、つえから魔法が空へと放たれる。
すると空が急に暗くなり、辺り一面に雷鳴が響き渡った。そう思った瞬間、稲妻がゴブリンの大群に落ちながら爆発していく。
リューセイとクライスは、それに気づき慌ててその場から離れようとする。だが時既に遅く、その爆発に巻き込まれた。
それをみたアベルディオは、急ぎ防御魔法を放ち二人を結界で覆いつくす。
「クッ、少し遅かったか。まぁ、あの二人なら大丈夫だろう。だがイシス、やりすぎだ!」
そう言いアベルディオは頭を抱えた。
それと同時ぐらいに、ユリエスが放った矢はゴブリンキングの方に向かっていた。
その矢は途中、イシスが放った魔法をかすめる。
だがその矢に魔法が当たるも減速するでもなく、そのままゴブリンキングの方へとまっしぐらに向かっていった。
そしてその矢は、イシスの魔法が付与された状態でゴブリンキングの胸を貫く。
「グオォォォォ〜!!!」
ゴブリンキングは驚きと痛さのあまり、大きな声を張り上げ泣き叫びながら暴れだす。
そしてドカドカと地響きをたてながら、猛スピードでリューセイとクライスの方へと駆けだした。
それを見たリューセイ達とルルカは、どうしようかとアタフタする。
「って、おい! なんで、あんなのが森の奥にいる!?」
そう言いクライスは、逃げようとしたが結界が張られているためにそこから出られない。
「……この結界は! アベルの仕業か? これじゃ逃げられん。おい、結界を解いてくれ!」
それを聞きリューセイは、結界をコンコンと叩いてみる。
「なるほど、結界か。クライス、ここから出ない方がいい」
そう言いニヤリと笑みを浮かべた。
「リュー。それって、どういう事だ?」
「さすが、アベルディオだ。この結界なら、ゴブリンの攻撃を防げる。ただ攻撃はできないけどな」
「なるほどな。そういう事か。それなら大丈夫そうだな」
そうクライスが納得すると二人は、魔法が解けるまでのあいだ結界の中で戦況を伺うことにする。
片やアベルディオは、自分のほうに向かってくるゴブリンの大群に戸惑っていた。
「これはまずい。どこかに逃げなければ」
そう言うと辺りを見まわす。
「って! この状況では、どこにも逃げられない。どうしたら、」
アベルディオはそう思うが、気持ちばかりが焦り考えがまとまらない。
そうこうしているとゴブリンキングは、リューセイとクライスの約五百メートルぐらい離れたあたりで立ちどまる。
そしてゴブリンキングの胸を貫いたその矢は、そのままの状態で激しい光を放ち始めた。
それと同時に、空から稲妻が落ちゴブリンキングを直撃する。
そしてその直後、胸に刺さった矢が『バァーン!!』と暴発しゴブリンキングは森の奥へ吹きとばされた。
近くにいたゴブリンは、その爆発に巻き込まれ四方八方に吹き飛ばされる。
その爆風は、リューセイとクライスの方まで及んだ。だが、結界のおかげで難を逃れた。
生き残っているゴブリン達は、何が起きたか分からずその場に佇みキョトンとする。
そして我に返り、一斉にゴブリンキングが出てきた方角をみた。すると、なぜか森の奥へと歩きだし姿をけす。
それを確認するとアベルディオは、リューセイとクライスにかけた結界を解いた。そして、二人の方へ歩みよる。
そのあとを、イシスとルルカが追った。それを追うようにユリエスは、木から降りリューセイ達の方へと向かう。
その後五人とルルカは、リューセイとクライスのキズを癒すために、少しここで休むことにした。
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