第31話 沈黙
とわが目を覚まさない。脈も心臓の鼓動もあるけれど、ずっと眠り続けている。それもうなされたまま。おでこも熱い。
「おい、とわ!!大丈夫か!! おい、とわ!!!」
必死にゆすっても、その目は覚めない。必死に呼びかけても、その口は動かない。
僕はパニックになった。 一番なってほしくない事態に限りなく近づいてしまった。 まだ、ギリギリ息はしているけれど、ずっと動かないまま。
「お願いだ・・・お願いだ・・・目を覚ましてくれよ・・・・とわ・・・・。」
我慢し続けていた感情が一気にあふれ出した。 目の前が一気にぼやけて頬が湿った。
あともう少し早く探していれば、あともう少し早く本を見つけることができていたら・・・・僕は自責の念に駆られた。
とりあえず布団に寝かせて、おでこを冷やし、必死に看病をしてみたけれど、彼女は一向に目を覚まそうとしない。 どうしたらいい。誰に頼ればいい。 頭が真っ白になった。
僕はクルマにとわを乗せて、あらゆる病院を駆けずりまわった。・・・・が、何処のお医者さんも原因はわからない、とにかく安静にさせて、の一点張り。
それもそうだ、この子は未知の病にかけられてこのようになっているのだろうから。
そのまま、僕は街の中を彷徨う。 とわと出会った日と同じように彷徨う。
そして、僕はふと休憩をとるためにある公園に立ち寄った。
とりあえず、彼女を助手席で寝かせたまま、僕は駐車したところからすぐのベンチに座って、色々な事を考えていた。
まだどうにか救える方法はないのか。もしかしたら、もうこのまま目を覚まさないのだろうか。 ・・・・そして、ぼくはこのまま進んでいっていいのか。 そんなことを。
神様はいつだってそうだ。僕が人生を賭けて何かをしようとしている時に、いつも邪魔をしてくる。
おじいちゃんの時だってそう、そしてとわもそう。
なんでこんなことばかりになるんだ・・・・夢に僕は近づいちゃいけないのか?
そんな事を思いあぐねていた。
結局悩みに悩んでもまだまだその問いの答えは見つからない。
もう一度、パジェロに乗り込む。シートにグッタリ腰かけて、頭の後ろで手を組み、また考え事をする。
チラッと助手席の寝顔を見つめてみる。少し前に見た寝顔と同じ、穏やかな寝顔だった。ゆっくり息を吸い、ゆっくりと息を吐く。優しい寝息だった。
こんなにも見ていて落ち着く寝顔をしているのに、まだ落ち着けないのは、彼女がまだ目を覚まさないから。
その後もずっと考え事をしていたら、なんだか眠たくなってきた。
それもそうだ。今日はとわを病院で診てもらうために、色々と駆けずりまわっていて疲れていたのだから。
徐々に意識は薄れゆき、僕はそのまま眠りについた。
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