第32話
3月1日、この日3年生は卒業していった。
卒業式の前日、3年生を部室に招待してお別れ会が行われた。
この日の為に在校生の彩達5名で写真と音楽を編集して部活の思い出のショートムービーを作ろうという事になった。
この作業は悠人と亮が得意分野なので二人が中心になって作っていった。
女子3人は部活で撮影した写真にエピソードを書いたり、イラストやシールなどで可愛くデコレーションして在校生の一人一人もお礼のメッセージを書いて思い出のアルバムを作った。アルバムといっても大それたものではなく色紙の豪華版みたいなものだ。ああだこうだと言いながらのこの作業はとても楽しかった。
彩はいつの間にか悠人とも自然に話しもして、いつもと変わらず接することが出来ていた。
お別れ会は簡単なお菓子と飲み物だけだったが、ゲームをしたりして盛り上がった。
最後にショートムービーを見た時は、最初、みんな笑顔で見ていたが最後は女子は全員泣いていた。
3年生が卒業したら、学校は少し静かになった気がした。
たまにひょっこり顔を出していた3年生の先輩が部室を覗くことももうない。
淋しいけど4月になれば新1年生が入ってきて又賑やかになるだろう。
彩は私も先輩らしく成長しなくちゃと思っていた。
3年生が卒業して部会が開かれた。
次の部長、副部長を決める事になった。
「僕は、部長に落合悠人、副部長に水野春香を推薦します」と亮が言うと
「賛成!」と美玖と彩は大声で言いながら拍手した。
「多数決で決まりだな」と亮が言うと
「決めるの早すぎないか?」と悠人が言ったが
「落合部長、水野副部長、よろしくお願いします」と亮と美玖と彩が口々に言うと
悠人は春香と顔を見合わせて
「しょうがない、やりますか」と言いながら2人とも満更でもなさそうだった。
早速、新部長の悠人が挨拶を始めた。
「え~、ただいま部員の皆様の絶大なる支持を得まして新部長に選ばれました落合悠人でございます。僭越ながら一言ご挨拶を申し上げます。
え~、放送部は毎年入部が少ないのが難点でして来年度は部員総力をあげまして新入部員を増員し今の倍にしていきたいと考えております…………精一杯頑張る所存ですので皆様のご協力のほどよろしくお願いします。みんなで盛り上げていきましょう」と本気かどうか分からない至ってまじめな挨拶にみんな大笑いしてしまった。
「なんちゃって」と悠人も大笑いしていた。
まぁ、こんな風にふざけているのかまじめなのかよくわからない悠人だったが彩はやっぱり悠人が憎めないし好きだと思った。片思いでもいい、ずっと好きでいようと思っていた。
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