第25話
10月1日、県大会の日がやってきた。
この日は県教育会館センターの大ホールで行われた。
『朗読部門』『アナウンス部門』は審査が別々に行われ、それぞれ用意された会場に移った。
『アナウンス部門』の参加者は案内された会場で待っていると
係の人が現れて大会のスケジュールを書いた紙を配られた。
参加者は21名。午前と午後、2回審査が行われる。
午前中は10時から始まり今日、持ってきた原稿をアナウンスする。
昼休憩を1時間とって午後1時からは今から新聞の一面をコピーしたものを配るのでその中の記事をもとに即興で自分がその記事を読んで感じたことなどを原稿用紙1枚分にまとめてそれをアナウンスする事。原稿は午後、自分の発表の時間までに仕上げる事。自分の順番の合間に今から書き始めても良いし、昼休憩を利用して書いても良いしそれは個人の判断に任せる事。ここは控室として自由に使って良い事。発表者の様子はこの部屋のモニター画面で見れる事等々説明された。
彩はこの場で原稿を作るなんて聞いてなかったので驚いた。
(なんてこった)彩はテンパってしまった。
が、参加者の誰も聞かされていなかったようだ。
(誰も条件が一緒ならやるしかないか)
午前の順番が発表された。彩は21人中8番目だった。
(それなら順番が来るまでに新聞の記事にざっと目を通しておこう。自分の出番が比較的早くて良かった。出番が済んだらすぐ原稿に取り掛かろう。原稿が出来ないと練習も出来ない)など頭を巡らしながら面白い記事はないかと探し始めた。
ざっと目を通した中に2匹のイノシシが山から里に下りてきて日中堂々と公園近くで見つかったという記事が目に入りこれは面白そうとその記事をもとに原稿を書くことに決めた。
ふとモニター画面を見ると5番目の人の発表中だった。それまでにも彩は感じていたが(うますぎる、プロのアナウンサーの集まりではないかと疑うほどレベルが高い。私なんか場違いじゃないのか)と怖気づいてしまった。
昼休憩に彩は美玖と合流してホール内の隅でお弁当を食べた。
彩が午後からこの場で書いた原稿を読むことになった事を話すと美玖も午後からは新たな作品を30分前に渡されそれをすぐ朗読するのだと言っていた。
お互い頑張ろうと言って別れた。
全てのスケジュールが終わって彩は疲れ切っていた。
一方、美玖はやり切ったと清々しい顔をしていた。
結果、彩は名前を呼ばれることはなかったが、美玖は28人の中で選ばれた5人の中に入っていた。
「美玖、すごい」彩は美玖と抱き合って喜んだ。自分の事のように嬉しかった。
美玖は県代表として選ばれ東京で行われる全国大会に行くことになった。
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