第23話
9月15日、地区大会当日。
彩達は朝日高校の隣の市にあるコンテストが行われる会場に来ていた。
各学校から生徒たちが集まってきていた。
「美玖、緊張する~」と彩。
「私も」と美玖。
山本先生が「自信をもって、日頃の練習通りに落ち着いて!」と2人に向かってガッツポーズをした。
最初に『朗読部門』の発表から始まった。
美玖はいつも以上に落ち着いて朗読していった。
山本先生も「これならイケる」と満足そうだった。
続いて『アナウンス部門』の発表になった。
彩は自分の順番が来るまで何度も練習していた。
「次は朝日高校1年生の松本彩さん」と呼ばれて
「はい」と返事をして用意されたマイクの前に座わり大きく深呼吸をした。
係の人の合図で
『こんにちは!今日は私達の学校で毎年………………』
彩はアナウンスが終わると一礼して控室に戻った。
(終わった、結果はどうあれ全力は出し切った)
彩は安堵感でいっぱいだった。
美玖が近づいてきて
「彩、良かったよ。今日が今までで一番良かった」と言ってくれた。
山本先生も
「良かった。良かった。声もしっかり出て明るく表現できていた。タイムも丁度良かった」
と褒めてくれた。山本先生がこんな風に褒めてくれたのは初めてだった。
地区大会で選ばれたら今度は地区代表として10月1日に行われる県大会に出場することになっている。
全ての発表が終わり、結果発表が行われた。
『朗読部門』
青葉高校3年生、新川真理さん
朝日高校1年生、中村美玖さん 以上2名です。
拍手と歓声が上がった。
「やったね」彩は美玖と手を取り合って飛び上がって喜んだ。
『アナウンス部門』
三矢高校2年生、安藤芳美さん
朝日高校1年生、松本彩さん 以上2名です。
「わぁ~」と歓声が上がった。
「えっ、私?」彩はまさか自分が選ばれるとは思わなかったので驚いた。
「やったじゃん」部員のみんなが彩の周りに集まって
「おめでとう」と言ってくれた。
『創作ラジオドラマ部門』
青葉高校。
…………。
残念ながら朝日高校は選ばれなかった。
それでも3年生も2年生も「悔しいけれどやり切った」と満足そうだった。
こうして地区大会は終わった。
山本先生が
「結果はどうあれ、みんな良くやった。ご苦労さん。みんな何か食べながら慰労会でもするか?」
と言うと
「やりましょう。やりましょう」とみんな口々に言った。
「どこがいいかな?」
「『回転寿司のネタロー』がいいです」と由紀。
「回転寿司?」と山本先生が言うと
「先生、知らないんですか?いま、高校生の間では回転寿司はファミレス感覚、カフェ感覚なんですよ。手頃な価格でにぎり寿司が食べれてサイドメニューも充実してるんですよ。ポテトフライや麺類、デザートもあるでしょ?」と由紀が一生懸命山本先生を説得している。
結果、『回転寿司のネタロー』に集まって慰労会が行われた。
みんな、全てを忘れて食べて飲んで楽しんだ。
山本先生は『朗読部門』と『アナウンス部門』で朝日高校の生徒が選ばれたことがよっぽど嬉しかったようで、僕が顧問をして初めての快挙だと言っていた。ここ最近、朝日高校が地区大会で選ばれることはなかったらしい。しかも1年生で選ばれる生徒は他の高校でもなかなかないらしい。先が楽しみだと言っていた。
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