第14話
6月に入ったある日、教室に入るとすぐに美玖が駆け寄ってきた。
「彩、良いニュースと悪いニュースがあるんだけど」
美玖は悲痛な顔つきだった。
「よっぽど悪いニュースなんだね、聞く前から怖いから良いニュースから聞くわ」
美玖は急に嬉しそうに
「夏休みに放送部の親睦を兼ねてみんなで海に行くことになったみたい。3年生は9月の大会が終わったら部活も引退だって」
「わぁ~、海いいなぁ、でも3年生はもう部活終わりなんだ、これ良いニュース?」
彩は3年生があと3ヶ月もするともう部活に来ないと思うと悲しくなった。
「あ~、そう来たか、悪いニュース言いにくいな……」
美玖は何か口の中でぶつぶつ言っている。
「聞かないのも気になるから言って……。心の準備はできたから」
彩は不安な面持ちで美玖を見る。
「えぇとねえ、大野部長の事なんだけど」
「なに、なに、大野部長に何かあったの?」彩はもうすでに泣きそうになった。
「何かあったって訳じゃないけど……。由紀先輩と」
「由紀先輩にも何かあったの?」
「う~ん」
「嫌だぁ、事故でもしたの?」彩は叫んだ。
「そうじゃないよ。二人は付き合ってるの」美玖は思い切って言った。
「……」
「ごめん、彩、ショックだよね。私も今日、たまたま知ったんだ。黙っていようと思ったけど隠す方が彩、嫌かなって思って」
「……」
「彩、何とか言ってよ」美玖も泣きそうだった。
「良かったぁ、事故じゃなくて……。美玖心配してくれてありがとう」
「彩、泣きたかったら私の胸貸すから思い切り泣いていいよ」
「やだ、大丈夫だよ。大野部長と由紀先輩,お似合いだもの。嬉しいくらいだよ」
「えぇっ、ショックじゃないの?」
「大野部長は私にとっては永遠の王子様なのよ。恋人がいてもいなくても」
「はぁ~、何それ、彩がショックを受けると思って今日はずっと彩のそばにいようと思ってたのに……」
「だから恋とは違うって最初から言ったでしょ、大野部長は遠い存在だからいいのよ、まぁ、スターみたいなものなの」
「も~ぅ、理解できないわ、心配して損した」
「ごめん、ごめん、アイスおごるから許して」
実際、彩は大野部長が由紀先輩と付き合っていると聞いてもショックはなかった。
部活も面白くなって学校生活が充実してきたせいか、気づいたら以前のように『大和様』の事も、部長の事も頭から離れないという事がなくなっていた。
あんなに崇拝していたのにと彩自身が不思議だった。
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