第8話 続2局長さんのヘルメットは66J
2027年に打ち上げられたタイタン探査ロケットは予定通り2036年にドローン探査機ドラゴンフライをタイタンの砂漠地帯に着陸させた。その調査結果を元に2056年にはタイタン開発ベースキャンプが作られ、そこを起点として2080年には数百人が暮らせる居住区が作られた。そして更に居住区を拡大していた2100年に地球で核戦争が起きたのだ。地球は2万発の原爆と数百発の水爆で跡形もなく破壊され放射能の惑星と化したのだった。
局長さんは豆粒ほどのガラス様の物をテーブルに置いて言った。
「これが例のチップなんだかね、接続端子は無いんだ。どういう仕組みかは解らないんだが、ただ一方向から強い磁場を当てると磁場による応答が有って、それをデジタルに変換してみたんだよ。」
「それをさらに画像化したら過去の地図データが有ったんですね。」
「まあ、そういう事なんだがね。」と言って局長さんは続けた。
「その画像の中に別のデータも入っていてね、その場所はこの地球ではなくタイタンんなんだ。」
「タイタンの地図ですか?」
「タイタンの地図ではなくてタイタンにある施設の地図なんだ。」
局長さんが画像を送ってくれる。
「これってデカくないですか?!」
「うん、施設と言うより街だね。巨大な発電所らしき物もある。」
「これって、ここに人類が生き残っているって事ですか?」
「それはどうかなあ、1万年前の地図だからね。地球からの補給物資なしで生きれるかどうか・・ タイタンは人類には過酷過ぎる環境だからなあ・・」
「行ってみましょうよ!」
「ふふ、サリーはそっ言うと思ったよ。」
「やった〜!行くんですね!」
「サリーも賛成すると思ってね、じつは船も手配してあるんだ。」
いつもの事ながら局長さんは手回しが良い。数日後にはタイタンに向かって出発の手筈が整っているという。
私は宇宙船に乗るのは初めてでワクワクだ。遠ざかる地球も美しくロマンチックな気分に浸る。局長さんは黙々と何かの作業をしている。窓から見える宇宙は想像より暗く銀河もはっきり見える。ネットとの通信も無く、今は局長さんと二人だけだ。
しかし、タイタンは遠い、1億5000万キロもあるのだ。船の速度では到着まで10年もかかる。
局長さんが言う、
「エネルギー節約の為にこれから10年間、タイタンに着くまでシステムを落とすからね。船の電源も落とすから、睡眠ポッドに入ってくれ。」
そうかこのまま行くんじゃあないんだ・・
睡眠ポッドは繭の様な形だった。その中に入って起動スイッチにタイマーをかけて自分をoffにするだけだ。目が覚めたら10年後か・・そう思うとつまらない。
ダメかもしれないけど聞いてみるか・・
「私も局長さんのポッドに入っていいですか?」と聞くと、局長さんは
「いいよ!」と気軽に返事をしてくれた。
そして私は局長さんの支持どうりに船の電源を切り・・
そして局長さんの横に滑り込んだ・・
そして・・自分をオフにした。
そして・・
そして ・・
そして・・10年後・・
私たちはタイタン周回軌道上で予定通りに起動した。
眼下に見えるタイタンは、薄ぼんやりとメタンの黄色い霧に覆われていた。
タイタンの後ろには視界いっぱいに広がる巨大な土星と、それを取り巻く巨大な土星のリングが、どこまでも広がっている。それらを背景にしたタイタンは、とても小さく頼りなく見える。
タイタンは月よりは かなり大きく 火星より少し小さい
マイナス180度の気温。地表大気圧は、1.5バール。
黒く見えるのはメタンの海だ。そしてメタンの雲・・
メタンの雨が大地を削り複雑な地形を作っている。
私たちはこれから探査ドローンでこの惑星の人類居住区を目指す。おそらくそこは廃墟だろう。何が待っているのか・・私たちは期待と不安が入り混じった複雑な気持ちでタイタンを見下ろしていた。
この話は【SF・サリーとホリホー】として再編集しさらに続きます。
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