第6話 夢

仕事が遅くなって終電になってしまった。

コロナ対策で乗客はみんなマスクをしている。

みんな疲れた顔でスマホを見ている。

ニュースでも見ようと私もスマホを取り出した。

そのとき隣に座って居眠りをしていた子に突然話しかけられた。


「ここは夢の中ですか?」


「はあ?なんですか?」

高校生ぐらいの若い子だ。


「私家で寝てたんですよ、目が覚めたらここに居るなんて、あり得ないですよね!」


彼女はスマホを取り出して時間を確認している。

「こんなのあり得ないよ、これ終電なんでしょう?」


「そうですね、これは終電です。」


何寝ぼけてんだよ・・そう思いながら私が聞いた。

「いま目が覚めたんなら、あなたはどこでいつ寝たんですか?」


「今日の夕方です。学校から帰って勉強してたら睡魔に襲われて、寝てしまったんです。で、目が覚めたらここなんですよ。ここって夢の中なんでしょう?じゃなかったらこんなのあり得ないし・・」


私は吹き出しそうになるのをこらえながら聞いた。

「ここが夢なら私はあなたの夢だってこと?」


「いえ、ここが夢なら私は自分の部屋で寝てるってことです。」


「いや、待ってよ。ここがあなたの夢の中ならこの電車も私もあなたが頭の中で作ったってことでしょう?そっちのほうがあり得ないでしょうよ。」


「じゃあ、どうして私はこんな所にいるんですか?」


「そんな事、私は知りませんよ。私は仕事で遅くなって終電に乗ったんです。これから・・・」

これから・・・

まてよ・・これからどこで降りるんだっけ・・

頭がぼんやりして、降りる駅名が思いだせない。

なんでだろう・・

彼女を見ると、体が半分透けて消えかかっている。

他の乗客も電車もだんだん薄れて・・消えていく・・

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