Free(100~400字)

最後の二人

 遠い未来のこと。人工子宮の発達と普及により、妊娠は過去の苦しみとして人々に忘れ去られていた。しかしある時、災害が全設備を押し流した。

 自然分娩を求められた女性達からはとうに本能が失われ、みな耐え難い苦痛を拒む一方である。子孫繁栄を諦めたヒトの個体数は徐々に減少していき――しまいには一人の老夫だけが残った。老夫は自分の子を残そうと必死だったが、見知らぬ女性が目の前で事切れたことを最後に望みは潰えた。

 誰が自然の美しさを愛でるのか――途方に暮れる老夫の耳に何かが届く。甲高いヒトの声だ。慌てて老夫が川へ駆け寄ると、付近で服を乱した婦人が多量の血を流して死んでいた。

 その傍らで赤子が産声を上げていた。女の子だった。

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