新説・桃太郎モノ語り

羽弦トリス

第1話どんぶらこどんぶらこ

ここはある国のとある村。

ジジイとババアは朝餉あさげの準備をしていた。

すると、家の出入口の扉を叩く者がいた。

「たのもう、たのもう」

「あんだって?まぁ~、うちは新聞なんて取らねぇだよっ!」

「たのもう、たのもう」

「ちっ、しつけ~野郎だぜ。ババア、話し付けてきな」

ババアは扉を開いた。

そこには、見るからに怪しげな男が立っていた。

「よ~やく開きやがったか、ババア!」

「うちは新聞は取らねぇだよ!」

「うっせ~、ババア。地獄新聞、朝夕取りやがれ!こんな、田舎のババアは印鑑ねぇだろうから、ここに拇印押しやがれ!」

男は力付くで、ババアの親指を朱肉に押し付けようとした。

「ジジイ、何とかしておくれ、このガキを」

「分かったババア、今いく」

ジジイは道具箱から黒い物体を持ち、男に近付いた。

「なんだ、ここはジジイもいるのかっ!」


パンッ!


乾いた銃声がとどろいた。

男は全身を痙攣させ、絶命した。

「ババア大丈夫か?」

「おら、何ともねぇだ、ジジイ」

「ま、トカレフは護身用に持っとかねぇとな。それより、ババア。いつもの」

「あいあい、分かっとるだ」

ジジイとババアは男の財布から金を奪い、金のネックレス、ロレックスを剥ぎ取った。

ジジイはタバコを吸い、男を担ぎ棒に縄で括った。

ジジイとババアは縦に並び、死体を担いだ。

そして、すぐ近くの小川に死体を流した。

「なぁ~ババア。おら達に子供がおればのぅ」

「ジジイ、こんな商売続けても、老けていくだけだからのぅ。奪った金でインターネットでも買うかいの?」

「バーカ、ババア。インターネットは売っとらんばい。それより、村には電気がねぇ~べ」

そうこう、ジジイとババアが話していると、川上から大きな物体が流れてきた。


どんぶらこどんぶらこ。


「ババア、下がってろ。おらのトカレフでっ!」


バチュン!


物体はびくともしなかった。

「ババア、こら妖怪の類いじゃねぇ」

「ジジイ、こりゃ桃じゃ。大きな桃じゃ」

二人は死体を担いだ棒に、桃を結び付けて屋敷に持ち帰ったのである。

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